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執筆者の写真田村陽太

【第109回】ウィズコロナでの企業の海外進出は海外駐在員or現地ローカル社員どっちに任せる?(駐在員考察編②)


こんにちは。サンキャリア代表の田村です。



本日は「ウィズコロナでの企業の海外進出は海外駐在員or現地ローカル社員どっちに任せる?(駐在員考察編②)」についてお話していきたいと思います。



前回は、海外駐在員制度のメリットや海外駐在員制度の導入の課題の④の詳細までお話致しました。本日も海外駐在員制度の課題の途中から説明していきたいと思います。



【日本企業の海外駐在員制度の課題】


④現地ローカル社員達の自主性が育たない

⑤販売・仕入れ等の意思決定スピードが遅い

⑥駐在員自体の福利厚生・給与待遇制度の設定の複雑さ

⑦海外駐在自体が一人につき長くなりがち



⑤については、ローカル販売価格や仕入価格の決定等を最終的に決める決定権が日本本社にある事から、新規海外顧客を失注してしまったり競合他社に注文を取られたり等の営業活動での失敗を引き起こす事が良くあります。



海外では部門制が採用されており、商談する担当者はその部署の一定の権限を得ている方として商談に来ているにも関わらず、日本人駐在員と商談していても日本本社に最終確認しないとその場で決裁が取れないという状況において、日本顧客との商談は多少なりともストレスや苛立ちを感じる事が良くあると聞きます。駐在員制度を導入する事で、日本企業全体で動くため、意思決定スピードの遅さが海外事業に悪い影響を与える要素はあります。



⑥については、海外駐在員は基本的に勤務地が海外の為、日本企業国内から支払われる給与は日本の所得税法上は非課税となったり、日本から支払われる給与の額如何では、日本で加入していた雇用保険や健康保険・厚生年金保険の加入を継続するか喪失するかに影響したり等、色々と制度設計が複雑です。



また駐在員の給与に関しても、今まで日本本社で赴任していた際の金額に駐在員手当を支給したり、勤務国によってはハードシップ手当、家族帯同であれば赴任手当を支給する等様々な手当を支給する事があります。



日本国内での社会保険の都合上、それらの給与の内訳を日本本社と海外現地法人でどれくらいの比率で支払うかも、事細かく決めなければならず駐在員の人事設計はとても複雑という要素もあります。



⑦については、海外駐在員という「海外営業」をする方の専門性にも起因しますが、現地ローカル社員との外国語でのコミュニケーションを行ったり、駐在員として現地法人の社長や拠点長を行ったり等、海外駐在員というお仕事はいわば「専門職」です。



海外駐在員として派遣させる対象の従業員は、メーカーであったら製造・開発技術の専門性がある方、もしくは英語等の外国語がしっかりと話せる方など、必ず駐在員として現地法人に赴任する際に、しっかりと現地ローカル社員の前で威厳が保てるような専門の方を配置する企業が多いです。



そのような専門人材が、例えば元々企業内にあまりいないとすると、海外赴任に対応出来る従業員がそもそもいないため、一人の海外駐在員につき赴任期間が長くなるのは避けられません。



また⑥でも述べましたが、駐在員の給与・福利厚生の設計は複雑であるからこそ短期間で駐在から帰ってきた場合、再度日本本社での給与を再調整しなければならなくなる等の大変さもあります。



以上までで、駐在員制度のメリットや課題についてご説明いたしました。駐在員制度を導入する事で、日本企業のグループとしての一体感の醸成や企業ブランドの維持等が期待されますが、反対に海外という日本と距離的・時差的・文化的に離れている事から起きるデメリット等もある事がご理解いただけたのではないかと思います。



本日は「コロナ禍において企業の海外進出は海外駐在員配置or現地ローカル社員に任せる?(駐在員考察編②)」についてお話しました。次回は(ローカル社員考察編➀)をお話したいと思います。





執筆者:田村陽太(社会保険労務士)



産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。



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