こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は「海外子会社から日本本社への出向で注意すべき事(中編)」についてお話していきたいと思います。
まず給与・福利厚生等の労務についての注意点の続きの③からお話いたします。
③ 休日・休暇、給与支払い日等の違いについて十分に説明する必要がある事
日本の労働法はもちろん、日本で働く社員や日本企業の籍で働く社員に使われる法律で、海外で働く社員や海外籍で働く社員はその海外現地の労働法に基づいて主に働いています。賃金だけではなく、労働時間や休日(国民の祝日等)、有給休暇・里帰り休暇、給与支払のルール等も海外と日本の労働法では大きく異なる項目も多いです。
海外と比較して日本の労働法の方が労働者にとって不利益である項目は主に、
・有給休暇が取りにくい
・残業させやすい
・年間で最大働ける日数が多い
事が挙げられます。必ず日本本社勤務となる場合には労働条件通知書で記載されている各項目については詳しく説明を行い、特に上記3点については(1)法律で定められている事、(2)企業が法律の範囲内で行おうとしている働かせ方、(3)従業員に認められている労働分野で行使できる権利については、特に分かりやすくお伝えすることが重要です。
今までは主に給与設計や休日・休暇、社会保険制度等の労務分野についてお話しさせていただきました。次は日本本社に転勤してきた外国人社員と一緒のチームで働く上での組織運営や社内風土等の「人事」的な部分で重要な点をお話ししていきたいと思います。
組織運営や社内風土作り等の人事についての注意点ですが大きく3点あります。
【組織運営や社内風土作り等の人事での注意点】
① 外国語対応をしっかりと行う(通訳をつけるかどうか)
② 外国人社員の為の業務進捗管理や状況報告対応をどうするか
③ 日本での生活支援を行う事
が主に挙げられます。それではこれらを細かく説明していきます。
① 外国語対応をしっかりと行う(通訳をつけるかどうか)
今まで海外企業籍であった社員は現地国で使われている言葉、もしくは英語を主に話していた社員が多く、日本語を話す事が出来る現地社員はそう多くありません。そのため日本本社で勤務させる場合は、外国人社員と日頃のコミュニケーションをどのように行うかは重要事項となります。
また、一部署のみを日本企業への出向中に担当させるのではなく、海外営業部や経理部、営業企画部等の日本本社と海外事業で大きくかかわる部署の業務を担当させる必要があるため、必ずしも英語が話す事が出来る日本人と一緒に外国人社員が働く事が出来るとは限りません。
そのため、通訳を日本本社出向中に採用するという手段もとることが出来るかと思いますが、私個人的にはお勧めしません。なぜならば外国人社員、日本企業どちらも当事者意識をもって働こうとする意識が欠如してしまうからです。
外国人社員としてもうまく日本人社員とコミュニケーションを取るために、進んで日本語を勉強したり、相手に分かりやすい英語で話そうとしたりする意欲を削いでしまう事がまず挙げられます。
一方で日本企業にとって重要な事として、社内で英語を習得するための研修や資格取得制度の導入を行う等社内でグローバル教育を行っていく第一歩となります。また英語を使わない部署の担当の方が外国人社員と触れ合う事で、海外事業部での業務の大変さをより理解することがメリットとして挙げられます。
以前からお伝えしていますが、海外事業部の業務は英語を使ったり、海外商習慣も理解しなければならなかったりと、企業の中でも「専門職」であるにも関わらず、その業務の大変さを他部署の方があまり理解できていないケースがよくあります。
外国人社員を日本本社で受け入れる事で、社内全体が海外事業の大変さや辛さに対して共感することが出来るようになり、そうする事で海外事業部の社員が他部署の社員との意思疎通等を円滑に行う事が出来るようになり、より働きやすい環境となっていくために重要です。
本日は「海外子会社から日本本社への出向で注意すべき事(中編)」についてお話しました。次回は後編についてお話ししたいと思います。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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