こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日はこんな時どうする?Q&A~(海外滞在しながら日本法人を運営する上での注意点)についてお話していきたいと思います。
新型コロナウイルスの蔓延で海外渡航する機会が最近まで少なくなっていましたが、海外渡航のルールが緩和されてきた中で、海外に滞在しながら今まで運営して来た日本法人をマネジメントしたいというご相談が沢山増えてきました。
短期間の1週間~1か月の期間といういわゆる「海外旅行」であれば、日本法人のマネジメントにおいてもリモートワークの働き方が進んできたこの世の中ではそこまで難しくないかもしれません。
ただ1年とか5年とかの比較的長期間での海外滞在となった場合、日本で加入していた保険をどのようにすれば良いか等、特に経理や人事労務等のバックオフィスの面での懸念点が増えるかと思います。
本日は、海外滞在している経営者が日本法人をマネジメントする上での注意点について、いくつかの視点、特に人事労務の視点からお話していきたいと思います。
【社会保険加入の視点から】
1年以上日本を離れて海外に滞在する場合は非居住者となり、日本で加入していた社会保険は原則健康保険、年金制度共に適用されなくなります。ただ、日本企業で会社の健康保険・厚生年金共に加入していた場合は、原則海外に渡航していても加入を継続する事が出来ます。
そして日本企業の役員(経営者)の方であっても、会社から役員報酬が支給され続ければ海外に滞在していても日本の社会保険に継続して加入できるという事となります。
ただここで重要なのが、その役員報酬を支給して社会保険を継続的に加入する事でのメリットが本当にあるかどうかを考える事だと個人的に思います。
具体的に申し上げると、日本の会社で加入できる社会保険には
・厚生年金
・健康保険
の大きく2つがあります。(介護保険は日本に居住する役員、従業員が加入できる保険ですので、海外に滞在する事になった場合は加入が出来ません。)
厚生年金は、会社と被保険者が役員報酬・給料額に対して決まる保険料に対して半分ずつ拠出して被保険者が将来的に受給する年金を積み立てる為のもので、自営業者が加入する国民年金と比較しても、将来もらえる年金が多くなる傾向の年金制度となっております。
一方健康保険は、病院に通院する際の自己負担額が軽減する保険証の役割や、プライベートのケガで労務不能になった場合の休業中の手当として支給される傷病手当金等の役割があります。
ただ、海外滞在中にこれらの制度を使う場合は、海外の病院で受診した際の診断書の日本語翻訳のコピー等を添付しなければならない等、申請手続きが非常に煩雑になるケースが多いです。
また日本の健康保険制度に照らし合わせた際に日本で保険適用になっている部分の医療費のみ保険金が返還されるため、場合によって現地民間の医療機関にかかった場合は、日本の健康保険に加入しているのに関わらず保険が適用されないケースもあります。
また海外の滞在国によっては、現地での就労不就労にかかわらず現地国での社会保険に加入しなければならなかったり、また公的な保健医療よりも民間医療の方が迅速かつ適切な治療を受けられる事があったりと、日本の健康保険制度に継続して加入する事が本当に必要となるかを考える必要があるかと思います。
本日はこんな時どうする?Q&A~(海外滞在しながら日本法人を運営する上での注意点) についてお話させて頂きました。
今回は以上となります。次回も続編をお話していきたいと思います。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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