こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は、続編でこんな時どうする?Q&A~(海外滞在しながら日本法人を運営する上での注意点②)についてお話していきたいと思います。
前回までは社会保険の視点からお話してきましたが、今回は役員報酬の支給の視点からお話していきたいと思います。
【役員報酬支給の視点から】
海外に滞在している状態で日本企業から役員報酬を支給する事は可能ですが、その場合原則たとえ非居住者でも、役員報酬に対して所得税が源泉徴収されます。
そうなった場合日本で確定申告する必要が出てきますので、注意が必要です。(ケースバイケースとなりますので詳細は海外税務を得意とする税理士の先生にお聞きください。)
また、その場合、日本企業自体の法人税と日本での個人の所得税の申告の手間も発生します。海外滞在している状態での税務申告となる為、一旦日本に帰国したり、日本の納税管理人を配置したり等の手間が発生するので、税務申告のやり取りが一層大変になるケースが考えられます。
また前回のニュースでもお伝えしましたが、日本の社会保険に継続して加入する為には役員報酬を支給しなければなりません。
海外滞在中の社会保険制度自体の利用が煩雑であったり、海外医療に対して適切に保険適用されるのが難しかったり等の側面がある中で、果たして海外滞在中でも役員報酬を支給するのが本当に自社にとって適切なのかを、一度真剣に考える必要があると個人的に思います。
以上、海外滞在における人事労務の視点でのマネジメント方法のアドバイスをお話しましたが、今までお話してきたように海外滞在が決まったら日本企業の社会保険を脱退して海外現地の社会保険に加入するという選択肢も出てきます。
日本ではもともと、海外に長期滞在する人は日本の社会保険に加入する必要が原則ありません。(国民年金も海外に滞在する事になった場合は資格が喪失されます。ただ任意加入する事はできます。)
海外に滞在していても日本の会社の社会保険に継続して加入する事はできますが、今までお話してきた視点からお話させて頂きますと、海外滞在中の社会保険加入は経営者向けのものではなく日本企業の従業員(特に海外駐在員)の為にあるものだと私個人的には思います。
社会保険を継続できないと海外駐在に対するモチベーションの低下等で、海外赴任する従業員さんから不満が起きますからね。
【海外滞在中に社会保険に継続加入するかのチェックポイント】
次からは簡単とはなりますが、これから海外に滞在される経営者が役員報酬を支給して継続的に社会保険に加入するべきか、日本の社会保険には加入せず海外の社会保険に加入するかを決める際のチェックポイントをお話していきたいと思います。
➀海外での滞在期間はどれくらいか
②経営者の方、帯同家族が健康であるかどうか
③事業自体の決算が好調であるか
の以上3ポイントの視点でチェックするのが良いかと思います。①に関しては滞在期間が比較的長期となると、海外滞在期間中に日本の年金に加入しようとも国民年金にしか任意加入できないので、将来の年金を手厚くしたいのであれば会社で社会保険に加入するのが一つです。
②に関しては健康保険の側面からです。経営者の方や帯同家族の方の健康状態に不安がある、もしくは比較的高齢であるのであれば、日本の健康保険に加入する為に会社の社会保険に加入する事は意義があると思います。
③に関しては、会社の利益に余剰がある会社様で役員報酬を支給する余力があるのであれば、役員報酬を支給して社会保険に加入する事も意義があるかと思います。
以上➀~③の視点で総合的に判断して頂くのが個人的には良いかと思います。
本日はこんな時どうする?Q&A~(海外滞在しながら日本法人を運営する上での注意点②) についてお話させて頂きました。
日本企業の経営者の方、そして比較的小規模企業もしくは中小企業の経営者であれば、会社の事業計画や自身の生活プラン等に合わせて、自身の役員報酬を自由に設定でき、社会保険も役員報酬の支給の有無により比較的自由に取得喪失が出来ます。
前回、今回のニュースでお話しました社会保険の加入の目的やご自身の事業や生活プランと総合的に照らし合わせて、海外滞在中の社会保険加入を決めて頂くのが良いかと思います。
今回の件でご相談、ご興味等ありましたら、いつでもお問い合わせフォームからご連絡してください。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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