こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は続編で『従業員採用時に取り交わす必要がある書類とは?③』についてお話していきたいと思います。
(3)(就業に関する)誓約書
この誓約書の記載内容は会社によって様々ですが、大まかに記載する内容としては、
➀就業にあたっての遵守事項の確認
②在職中、退職後の秘密保持の誓約
③競業避止義務の誓約
④他従業員の退職勧誘の禁止
⑤損害賠償請求額の上限設定
以上が代表的かと思います。①は、その従業員が誠心誠意を込めて会社に就業する事を宣誓してもらうものです。また、就業する上でのルールは何によって運用され、そのルールを遵守して従業員は勤務しなければならない事を宣誓させるものとなります。
一般的には、従業員10人以上の会社であれば就業規則を、10人未満であれば雇用契約書やその他会社独自に作成した就業上の諸規則に基づいて勤務する事を誓約書に記載し、誓約してもらう事が多いです。
「就業規則が既にあるから一人一人の誓約書までもらう必要ないでしょ?」と思われる方もいるかと思いますが、個人的には誓約書をもらっておくべきだと思います。
といいますのも、就業規則を会社で法的に運用する為には「民主的に選出した従業員代表に意見をもらい、その他全従業員がいつでもその就業規則を閲覧できる状態にしておく」事が必須です。
もし、この就業規則の効力要件に合致しない就業規則の整備状況だった場合(例:民主的に従業員代表を選んでいない、就業規則が誰でも閲覧できる状態になっていない等)、就業規則が効力を持っておらず、全従業員に対して就業時の誓約事項を事前に周知出来ていない可能性が発生する事にも繋がります。
また、就業規則等の諸規程を会社が事前に作成していても、実際にはあまりじっくりと見ていない従業員の方も多いです。何か労働トラブルが起きた時に「そんな規則がある事なんて知らなかった」「そんなルールがある事を聞いてなかった」と言い訳できる機会を作らないよう、しっかり丁寧に誓約事項を説明し、一人一人から誓約書をもらう事は重要だと個人的には思います。
②は、会社で就業する上で扱う機密情報を、業務上の必要性を超えて社外に漏らさない事を誓約する事項となります。機密情報の漏洩により自社の風評被害を防ぐことや顧客・第三者への名誉棄損等による損害賠償請求を防ぐことにも繋がります。
③は、退職後に自社と類似の業務を行う会社や取引先への就職、また類似の会社設立や自営等の独立を防ぐことを誓約する事項となります。自社の事業活動の為に研修教育し、情報開示したノウハウを他の目的に利用され、自社の事業活動を一定期間阻害しないよう誓約する事項となります。上記②の秘密保持の内容とセットに記載する事が多いです。
競業避止義務は憲法上の「職業選択の自由」の関係上1年、長くても2~3年位までしか誓約できない事が判例上多いようです。(より詳細な内容はお近くの弁護士等に確認ください。)
④は、現存する社員を他社に引き抜いたりしないよう、在職中にそのような退職勧奨するような言動は行わない事や退職時の引継ぎの際も余計な事は行わず、円滑な対応を行う等の誓約を行う事項となります。
⑤は次回お話する身元保証書にも繋がりますが、事前に①~④の事項に違反した場合に損害賠償請求する可能性がある事を誓約し、いくらまでの金額を上限に損害賠償請求する可能性がある事を誓約する内容となります。
「上限に」という内容が重要で、労働基準法第16条では、賠償予定の禁止の事項として「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」とされています。
損害賠償額を具体的に明示する事は出来なくても、業務上の目的を逸脱して行われた会社への不法行為に対して〇万円を上限に損害賠償請求する可能性がある事を伝えるのは非常に重要です。
ただ、この損害賠償請求できる額は実際に会社に対して生じた実損額(損害として算出できる額)となりますので、本損害賠償請求額の上限設定事項の意味合いとしては、従業員に対して不法行為を行わないよう誓約する「抑止力」の意味合いが強い事を理解しておくことが重要です。
本日は『従業員採用時に取り交わす必要がある書類とは?③』についてお話させて頂きました。次回も続編をお話させて頂きます。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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