こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『固定残業手当を導入する事の実務とメリット・デメリット➀』についてお話していきたいと思います。
従業員を採用する際の給与設定、特にフルタイムで雇用される方の給与に関して、前もって固定残業手当を導入する企業様は比較的多いかと思います。会社によっては「営業手当」や「管理職手当」として支給している企業様でも、手当の中身を見てみると固定残業手当である事は実際に多いです。
今回は、給与設定時に固定残業手当を導入する事でのメリット、デメリットを重点にお話していきたいと思います。
まず固定残業手当を支給する為のルールを簡単におさらいしますと、
・基本給と固定残業手当の額が明確に分けられて表示されている事
・固定残業手当に含まれる固定残業時間や算出ルールが明確にされている事
・固定残業時間を超えた残業を行った場合に別途残業手当を支給するルールになっている事
この大きく3点が重要です。(参照:山梨労働局HP https://jsite.mhlw.go.jp/yamanashi-roudoukyoku/kantoku/roudoukijun/09.html )
固定残業手当を設定する際にはもちろん、雇用される会社が所属する都道府県の最低賃金を下回らない事も重要となります。
それでは、固定残業手当を導入する事のメリットですが、
➀求人募集の際に給与額が比較的高く見える
②業務上必要のない残業が減りやすくなり、生産性が向上する可能性がある
③未払い残業代のリスクを一定程度減らす事が出来る
大きく3点あるかと個人的には思います。
➀は、通常の基本給とは別に毎月固定で残業手当を支払う事で、求職者にとっては他の企業の求人と比較しても、給与額が高く求人を獲得しやすいというメリットがあります。
最近の若い方は「出来るだけ残業をしたくない」と考える方も多いですが、一方で周りの社員が仕事で残っていても、「自分の仕事が終わっていれば定時になったらすぐに帰る」というマインドの方も少なくなってきていると個人的には思っております。
「固定残業手当を導入している会社は残業が多い会社だ」と若い求職者に見られているかと言ったら、そういう訳ではなくなってきていると個人的には思います。
②は、一定程度の固定残業手当を導入する事で、所定労働時間内に業務を終わらせようと考える社員が増え、結果的に残業時間が減りやすくなるというメリットもあります。
毎月固定残業手当が支払われる以上、固定残業時間の範囲内であれば残業をしてもしなくても金額が一緒であるならば、定時内で仕事を終わらせようと考える従業員は増える可能性は高いです。
一定程度従業員を雇用してきた会社であれば、各従業員の労働時間数がどの程度かが分かり、固定残業手当も導入しやすいかと思いますが、起業したばかりの会社や雇用を新たに開始した会社は、どの程度の金額の固定残業手当を導入するかを決めるのが難しいかと思います。
その為、労働条件通知書や就業規則等に「固定残業手当の額や固定残業時間を適宜見直せる事」「その場合固定残業手当の減額の可能性がある事」等を事前に従業員に周知しておくことが非常に重要かと個人的には思います。
③は、毎月の給与支給時に固定残業手当を導入しておくと、万が一給与計算方法が間違っていた場合でも未払残業の発生を防止する上で非常に重要です。給与計算時の未払い残業が発生するよくある事例として、
・始業前の就業準備等の早朝勤務や、定時後の帰宅準備等を労働時間とするか
・各種手当を考慮した割増賃金の基礎単価の計算ミス
・各月の勤怠集計ミスによる総残業時間の計算間違い
等が挙げられます。これらのミスが起き、実際に計算した残業代の額が仮に間違っていたとしても、毎月の固定残業手当の額でカバーできていれば、会社の未払残業のリスクは一定程度減らす事が出来ると個人的には思います。
本日は『固定残業手当を導入する事の実務とメリット・デメリット➀』についてお話させて頂きました。次回も続編をお話していきたいと思います。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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