こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は【海外駐在員を派遣するまでの人事部がすべきステップ】の第八段階目の⑧海外駐在員の日頃の健康管理・メンタルヘルス管理を行う上で重要な事をお話致します。
今までにお話しました通り、海外駐在員は海外現地法人での管理業務や現地での営業等様々な業務を任される一方、日本本社に対しての海外事業の報告・進捗管理の業務も行わなければいけない等大変ハードな業務を抱える事になります。
日本本社で勤務していた時代と比較すると、業務量的にも拘束時間的にも多大なストレスを抱える事となり、日本企業の海外駐在員は身体的なストレスや精神的ストレスを多く抱える事になります。
また海外の住宅から現地法人のオフィスまでの出社が車通勤となる影響から、運動不足になり体重が急激に増加するという事例も良くあります。また会社独自の海外駐在中の安全管理規程により、海外の住居の近く周辺のみに行動範囲が制限されてしまい、一日の運動が社内や住居内での移動だけとなり、海外駐在員が運動不足になる事例も良くある事です。
会社でスポーツジムの会費や自宅で利用出来る運動器具の購入費用を補助する等運動での健康管理を会社でサポートしてあげる事が望ましいです。
また食事面においては、日本での生活と比較して濃い味付けの食事や脂っぽい食事が多い傾向から、塩分や脂肪分を多く摂取してしまい栄養の偏りによる体力の低下や糖尿病等の病気を発症してしまう事例も多くあります。
また現地の駐在員や海外の顧客との商談後の飲み会に出向く等お酒を飲む機会の増加により、アルコール摂取過多による健康問題が発生する事もありますので、定期的に駐在員のアルコールの摂取回数を人事部でチェックする事や、海外駐在員に対して無理な営業課題を本社が課したり等の高いストレスを与えない事がとても重要です。
またそれと反対の事例として、単身で海外赴任をしている方に対しては、外出をせず、家でもあまり食事をとらない等栄養失調に陥るパターンも多くあります。日本本社の人事部としては海外駐在員が単身なのか、家族同伴なのか、日本での生活習慣はどのようなものか、本人の対外的なコミュニケーション能力はどのようなものなのか等を総合的に判断して、駐在員の健康管理のチェック度合いを測る事が重要かと思います。
また運動や食事等の健康管理以外に、海外駐在員の精神的なサポートを人事部が積極的に行う事も非常に重要です。海外では日本と比較して何倍も沢山働いているのにも関わらず、駐在員自身の評価に繋がらず多大な不満、ストレスを抱えているパターン、日本本社が海外現地法人での事業の辛さや海外ならではの営業の進め方を理解しておらず、海外駐在員が仕事に対するモチベーションを下げている等、海外駐在員として働いてるからこそ悩んでいる事が沢山あります。
日本で働いている社員を対象とするのであれば、人事部としては、会社で一緒に働く同期や親密な関係の他部署の方の話をヒアリングする事で、普段の社員の働きぶりや最近の様子を伺う事が出来、メンタルヘルス不調になる前に何らかの人事施策を取りやすいですが、海外で勤務する駐在員となると、普段その方の様子を知る事が出来るキーマンが家族や現地子会社の社員、代理店の社員等、非常に限られてしまいます。
また家族帯同で海外駐在している場合、会社での業務だけではなく、帯同している家族の家庭内問題や子女の教育問題に起因して駐在員がメンタルヘルス不調になっている例もあります。海外駐在員のメンタルヘルス不調をサポートするためには、一緒に帯同する家庭の方に対しても精神的なサポートを行う事も非常に重要である事が分かるかと思います。
よって人事部として海外駐在員の普段の働く様子に関してチェックする機会を月に何度か設けて面談し、決して海外事業部の社員のみで情報共有することが無いようにすることが重要です。
また帯同家族に対しても日本本社から海外現地でにおける教育情報や生活に有益な情報等、海外で生活する上での耳寄りな情報を定期的に発信する等の支援を行う事が非常に重要です。人間関係等のしがらみの無い第三者との面談機会を設ける事も重要なので、民間のカウンセリング会社と提携して、駐在中に健康や日常の問題等をいつでも相談できる機会を提供してあげる事も重要です。
弊所でも海外駐在員の方や駐在する帯同家族に対してのカウンセリングサービスを扱っておりますので、海外駐在員のメンタルサポートを利用したい企業様や駐在員個人の方は是非ともご利用いただければと思います。
以上で海外駐在員の日頃の健康管理・メンタルヘルス管理を行う上で重要な事をお話しました。日本企業が海外駐在員を派遣する上でのステップと重要な事に関してこれまでお話してきましたが、弊所が最後に重要な事として皆様にお伝えしたいことは、いかに人事部が海外駐在員を気配っているかという「見守られ感・安心感」を与える事が、駐在員が海外赴任で成功する一番のポイントという事です。
会社独自で様々な制度を設けて大企業並の人事制度を整備する事も重要ですが、何よりも一番重要な事は、海外駐在員と逐一相談して、一歩一歩着実に海外駐在員が働きやすい職場や制度を作っているという姿勢を海外駐在員に対して都度見せていく事が非常に重要です。
海外駐在員の人事労務管理に関しては、日本国内の社員に対する人事労務管理と異なり、非常に難しいポイントが沢山ありますので、もし追加でご質問等ありましたらいつでも弊所にお問い合わせ頂ければ幸いです。長文を読んでいただき誠にありがとうございました。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。
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