こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日のテーマは、海外企業と商談を行うステップで相手企業との契約締結時に必要とされる「貿易実務書類の準備方法(輸出編➀)」についてお話していきたいと思います。
先日までのブログでご説明した通り、自己開拓・他者開拓の方法で自社の製品やサービスを購入してくれる輸入者を探した後、購入手続き・売買契約を締結し、実際の商品・サービス販売までの流れを確固としたものとしていくというのが海外貿易の流れとなります。
今回は自社が商品やサービスを相手に販売する側(輸出者)として、どのような流れで進めていくべきで、今後販売契約を締結していく中で、どのような貿易実務上の書類を利用すれば良いか、また相手側と取り交わす必要があるかをご説明したいと思います。
➀信用調査レポートの発行
展示会や公的機関の紹介等で相手企業の強みや事業概要等をお聞きする事で、自社の製品・サービスの優位性や相手企業との親和性に関して具体化・具現化出来ている段階になってきているかと思います。
その後、企業とメールやWEB会議システムを利用して契約まで進めていくという流れが一般的ですが、その上で大事なのがこの「相手企業の信用調査」です。日本国内にはデータバンクや第三者機関等、有料での報告書発行サービスを行っている企業がいくつかあります。
またそれ以外に海外現地の日系企業の弁護士事務所や公認会計士事務所に依頼して信用調査レポートを発行してもらい、相手企業が取引に値するか確認するというパターンもあり、先述したデータバンクでの報告書発行と合わせて大きく2つあるかと思います。
事前に相手企業の財務レポートや代表者は誰であるか、取締役等の経歴、取引先企業との契約条件や払込状況等を確認する事で、次回ご説明するお見積書の記載内容である相手企業への契約条件や建値等の詳細な条件を決定したり、商談する上でのロット数を決定したりする等にも生かされます。
また、事前に相手企業の事業規模を確認する事は商談を行う上で非常に有利な資料となります。
あくまで信用調査レポートは参考資料かつ刻々と状況が変化し、内容も変わるものですので、その報告書の内容が100%正しい事実の情報である保証はありませんが、相手企業にとっては事前に先方が詳細に調査を進めている事で、一方に過剰に有利な契約を締結したり輸入者が代金の支払を踏み倒したり等、輸出者が想定する貿易上のリスクを最低限抑止させる事に繋がります。
②商品試作・サービステストレポート(報告書)の発行と合意書の締結
海外企業と自社の製品やサービスの販売契約を結ぶ前に、自社の提供できる品質(クオリティ)が、相手企業が求める品質の内容と合致しているかを事前に確認するレポートの発行がとても重要です。
海外企業との取引で良く発生するトラブルとしてあるのが、見積や契約締結の時点では、品質に関して何にも言わなかったが海外の現地工場や顧客への納品時にクレームを申し出てくるパターンです。
海外の担当者から「現地顧客が言っているのだから、相手が求めるクオリティを早く製作しろ。」とか「しっかりと品質の担保できる製品を輸出出来ないのであるなら、今回の輸出で契約を破棄する。代金はもちろん払わない。」等、海外に輸出した途端、クレームを入れてくるパターンです。これは初めて海外貿易を行う企業でしたら、高い確率で経験する事象でしょう。
このようなトラブルが発生する理由としては、自社が提供できる価値は具体的に何なのか、どのような条件の場合にはサービスをしっかり提供できるのか/出来ないのかという事を事前に輸入者に明示しておらず、相手と合意を得る事が出来ていない事が大きな要因として挙げられます。
基本的に販売契約とは、契約は締結の申込みに対して相手方が承諾したときに成立する諾成契約であり、たとえ相手側のニーズを100%叶えなくても相手側がこのクオリティで十分だと認識して、販売契約に合意していればその契約は成り立ちますし、輸出者は契約の正当性を主張できます。
あとで追加クレームとならない為にも、自社の商品・サービスの提供できる品質やその品質を提供できる条件はどのようなものなのか、英文契約書だけでなく、写真や動画等視覚で輸出者の提供する商品・サービスの中身が何であるかを具体的に理解できるようなレポート・報告書を作成しましょう。
そして、そのレポートを作成した後、要約した点を盛り込んだ合意書を作成し、輸入者側とレポート・報告書の内容に関して合意を得ておくことが輸出後の納品時や代金回収時のトラブルを防ぐためにも非常に重要です。
今回は、「貿易実務書類の準備方法(輸出編➀)」に関してお話させて頂きました。次回は続編で貿易実務書類の準備方法(輸出編②)についてお話していきたいと思います。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。
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