こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日のテーマは、前回の続きで、海外企業と商談を行うステップで相手企業との契約締結時に必要とされる「貿易実務書類の準備方法(輸出編➂)」についてお話していきたいと思います。
第53回、第54回にて輸出する際の相手企業の信用調査、そして契約を今後進めていく中での情報の秘密保持契約や輸出上のリスクをどちらがどれだけ負うか、納期はいつなのか等、後々製造を開始し、海外に輸出準備した後に内容が変わってしまうと輸出者が大変困ってしまう事についてお話しました。
本日は相手企業からの代金回収の際に必要で、なおかつ海外へ輸出する際に必要となる通関手続きで重要な書類に関してお話していきたいと思います。
➀L/C(Letter of Credit)
L/Cとは信用状と呼ばれるもので、銀行が輸入者に代わり、輸出者に対して代金の支払いを保証する確約書です。通常海外取引ですと、輸出者側は製品を輸出した後、海外でしっかり納品されたかどうかの状況が確認しにくくなることもあり、貨物船に製品を載せて海外向けに輸出する際に、輸入者から代金の100%を事前に受領するよう契約を進めていきたいと考えております。
ただ、輸入者側としても相手企業に事前に代金を100%支払っても、製品を輸出者が確実に発送手続きしてくれるか分からず、また輸入者側としては支払う側という有利な立場であるがために、支払い代金の内半額を前受けにして現地での納品・検収前後に残りの金額を回収する契約にする等、いかに自社のリスクを減らすような契約を締結しようと考えている輸入者も多いです。
そのような輸出者と輸入者の違う思惑を比較的公平に解消しようとするものが、L/Cを使った取引という事が出来ます。分かりやすく流れをお伝えすると、輸入者はL/C取引を希望する際には取引している銀行に対してL/Cの発行を依頼します。その後輸入者側の銀行はL/Cを輸出者宛てに発行し、輸出地の通知銀行を経由して、輸出者にL/Cの通知をします。
L/Cの書類の中には船積み期限や輸出内容の機物の詳細、輸出添付書類等、輸出者が遵守しなければならない事項が細かく記載されています。
輸出者としては相手企業と事前に契約した内容がしっかりと盛り込まれているか、準備する内容に過不足が無いかどうかを相手企業が発行したL/Cを見て綿密に確認する必要があります。
しっかりと輸出者がL/Cに基づいて輸出する事で相手企業の銀行から入金が行われ、相手企業も貿易書類を受領した後、船舶の機物を海外現地で荷下ろしする事が出来るので、輸入者や輸入者それぞれ海外輸出におけるリスクを平等に負うことが出来ます。
輸出者としてL/C取引を行う上で注意するべき点として、輸入者側がL/Cの発行手続きをいたずらに遅くしないように頻繁に念をおしておく事が重要です。L/Cの発行を依頼する輸入者は手数料を銀行に支払う必要があり、またL/Cの有効期限を出来るだけ短くする事で支払う手数料を少なくしたいという思惑もあります。
契約書には船積み期限がしっかりと明示されていますが、肝心である入金をもらうためのL/Cの発行がされない事で、輸出者の製造プロセスや貿易実務書類の準備に狂いが生じる事もあります。
輸入者の中にはこのL/C取引に不慣れである事を装って、代金の支払いを拒否できるように誘導してくることもありますので、売買契約後も輸入者がL/C取引を円滑に行ってもらえるよう頻繁にコミュニケーションを取るようにしましょう。
今回は、「貿易実務書類の準備方法(輸出編➂)」に関してお話させて頂きました。次回も続編で貿易実務書類の準備方法(輸出編④)についてお話していきたいと思います。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。
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