こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は、「海外現地法人設立の進め方(⑥日本本社の現地支援体制の構築手順)」についてお話していきたいと思います。
前回までは、駐在員事務所や海外支店、そして海外現地法人を設立するための進め方や企業が押さえておくべきポイントについてお話をさせて頂きました。本日は海外現地法人や海外事務所を設立した際に、日本本社としてはどのような進め方で支援すれば良いか、またどのような組織体制を構築すれば良いかのお話をしていきたいと思います。
海外事業の戦略策定や実務運営は、基本的には現地の事務所、海外現地法人が主体的に行っていく事が前提です。ただ、日本企業の一グループとして海外事業を運営している限り、日本の本社側が海外事業のやり方にノータッチである事は良くない事です。
その理由として、
①海外任せにすると品質、社風共にローカライズされ、日本ブランドの質が低下する
②管理監督が行き届かず、社内不正や隠ぺいの温床となりやすい
③海外駐在員の就業モチベーションが低下する
が挙げられます。
➀に関しては、例えば、海外顧客への販売履歴の追跡を行わなかったり、現地でのクレーム対応やメンテナンス対応がどのように行われているかを日本本社がフォローしなかったりした場合、現地法人なりのやり方で事業を進めてしまい、現地競合他社へのノウハウの流出や模倣品・海賊版の製品が出てしまう事がトラブルとしてあります。
②についても、例えば、海外の国の法律や税制だからと現地法人にすべての実務の権限を任せてしまうと、売上の横領や架空経費等の不正行為を生んでしまう事がトラブルとしてあります。
③に関しては、海外事務所を設立した後、現地のローカル社員や海外事業を管理するマネージャー職として業務を行う「海外駐在員」を派遣するパターンが多いですが、日本本社から海外駐在員の業務進捗管理がしっかりと行われていない事や人事評価等が適切になされていない場合、海外駐在員の就業意欲が低下し、その結果メンタルヘルス不調となり、うつの発症やそれを一因として自殺してしまう等のトラブルがあります。
上記のような理由から、日本本社は海外事業を行う上で適切な社内体制を構築する必要があるのですが、その上で日本本社がおさえておくべき重要なポイントをお伝えいたします。
➀現地ローカル社員の労務管理に日本本社の社員も積極的に関わる事
海外現地法人の代表が日本人、現地人であるに関わらず、「ローカル社員を雇用し、労務管理を行うのは現地だ。」と考える日本本社の方もいるかもしれませんが、不正経理や隠ぺいの温床となる事を防ぐために、採用面接や雇用契約締結・月次報告等、労務管理に関しても積極的に関わる事が重要です。
②取引先や外注先、提携先とのやり取りや関係性をしっかりと把握する事
自社の製品を購入してくれる海外現地の得意顧客や、製造委託をしている現地メーカー等の外注先、税務申告等を行う現地会計事務所や法務関係を対応する現地弁護士事務所等の提携先について、資金面でのやり取りの流れや担当者は誰なのか等の関係性をしっかりと把握し、定期的に海外事業を管理する駐在員やマネージャーに事実確認を行うことが重要です。
③日本本社と現地法人間の会議や情報交換会を定期的に行う事
日本本社が海外事業の実態を管理できていないという事は、反対に海外現地法人にとっては日本本社の経営方針や将来的な方向性に関してのビジョンが共有出来ていないという事を意味します。それを一因として、日本本社の思惑と違う方向で海外事業が進められてしまい、ノウハウの流出や模倣品・海賊版の製品トラブル等に発展するというリスクがあります。
まずは現地法人の管理職や幹部候補等重要なポストに就いているローカル社員等少人数規模で構わないので、定期的に日本本社と会議をしたり、情報交換会を持ったり等の機会を設ける事が重要です。
今回は海外現地法人設立の進め方(⑥日本本社の現地支援体制の構築手順)についてお話しました。これまで海外事業を円滑に行っていく上で企業で対策すべきアプローチである「海外現地法人設立の進め方」に関して様々な事例を紹介しながらお話してきました。
業種や従業員規模によって、適切な海外事業の進め方や海外事業形態の決定方法、海外駐在員等の労務管理手順は異なります。より詳しい事に関して疑問やお聞きしたい事があればお気軽に弊所にお問い合わせください。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。
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