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執筆者の写真田村陽太

【第86回】海外駐在が決まったら~Q&A~(雇用保険、社会保険はどうなるの?)


こんにちは。サンキャリア代表の田村です。



本日は日本企業で勤務する社員が海外駐在員として派遣すると決まった際によく聞かれる質問として、「~Q&A~(労働保険、雇用保険、社会保険はどうなるの?)」をお話していきたいと思います。



◆労働保険について

日本企業に適用される労働者災害補償保険法は、法律の一般原則として属地主義がとられているため、「海外出張」の場合には労災保険の対象となりますが、海外駐在員として「海外派遣」される場合には労災保険の対象となりません。



よって、海外駐在員として在籍出向となる場合に関しては、4つの選択肢が考えられます。



(1)労働者災害補償保険法の特別加入を行う

(2)日本企業の民間の海外赴任保険に加入する

(3)赴任国の公的労災保険を利用する

(4)赴任国の現地民間企業の労働保険に加入する



赴任国によって、労災保険制度がある場合・ない場合であったり、給付内容が日本と比較して薄かったりと保険内容が異なりますので、海外赴任をする前に現地国の保険制度を確認しましょう。



また、(1)の特別加入を行う場合には管轄の労基署で手続きをしますが、赴任時の業務内容を詳細に記入する事や給付基礎日額の設定が別途必要になるので、海外駐在員の派遣内容と照らし合わせながら社内で決定する事が必要です。



◆雇用保険について

海外駐在員として在籍出向となり、出向元から給与が支払われている場合は、元々国内で勤務していた際に支給されていたものと同等の金額を限度に雇用保険料の基礎となる賃金となります。その場合は雇用保険の加入が継続されます。



また、出向元から給料が支払われてなく日本企業の籍となる場合は、雇用保険は継続されますが、仮に1年以上の海外赴任や海外赴任後に退職した場合には、過去2年間のうち1年間で賃金が支払されている被保険者期間が存在しない為、基本手当(失業給付)を受給できない可能性があります。



ただし、給与が支払われていないが会社の社員として残っている場合でも雇用保険を喪失するようハローワークから指導される場合があるので、海外赴任前には事前に海外派遣内容と照らし合わせながら十分に確認しておきましょう。


その為、海外赴任後すぐ退職し失業給付を受給する際は、ハローワークに離職票を提出する際に失業手当の算定対象期間の延長申請を行いましょう。延長手続きをする事で退職前過去4年間のうち1年間の賃金支払実績があれば良いようになり申請要件が緩和される場合があります。


また、出向元から給料が支払われず現地企業の籍となる等転籍する場合は、雇用保険の資格を喪失します。その場合海外赴任後失業給付を受けようとした際に受給できない可能性がありますので、海外赴任前にはどのような勤務形態、待遇で派遣するかは必ず人事部と対象従業員の間で確認しておきましょう。



◆社会保険について

ここでお話する社会保険とは、健康保険・介護保険・厚生年金を指します。

健康保険、厚生年金保険に関しても日本本社の会社で雇用関係が継続されている場合は海外赴任となった場合にでも健康保険・厚生年金の加入は継続されます。



ただし、仮に給与が支払われていないが、会社の社員として残っている場合に健康保険・厚生年金を喪失するよう年金事務所から指導される場合があるので、海外赴任前には海外派遣内容と照らし合わせながら十分に確認しておきましょう。



また赴任国で健康保険や年金制度がある場合には、日本国内や赴任国両方で健康保険・厚生年金保険に加入しなければならない「二重加入状態」となる可能性があります。



赴任国によっては日本と社会保障協定を締結している場合があり、海外赴任期間が5年以下の場合は日本国内の健康保険・厚生年金保険の加入、5年を超える場合は赴任国での健康保険・年金保険の加入のみで良い場合があるので、事前に赴任国の社会保障制度の状況を確認する事が重要です。



また、介護保険に関しては原則日本に在住する被保険者から保険料を徴収しているため、1年以上海外赴任する予定の非居住者は住民票が海外転出となるため、別途介護保険適用除外等該当届の提出が必要となります。海外赴任から帰ってきた際には非該当届の提出が必要です。



今回は、日本企業で勤務する社員が海外駐在員として派遣すると決まった際に労働保険、雇用保険、社会保険はどうなるかについてお話させて頂きました。また何か不明点等あれば弊所に何なりとご相談くだされば幸いです。




執筆者:田村陽太(社会保険労務士)


産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。


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