こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は日本企業で勤務する社員が海外駐在員として派遣すると決まった際によく聞かれる質問として、「~Q&A~(所得税、住民税はどうなるの?)」をお話していきたいと思います。
海外駐在が決まったら今まで給与明細から控除されていた源泉所得税や住民税がどうなるのかという話です。まず前提として日本を1年以上離れる海外駐在員は海外転出届を提出する必要があります。そうする事で海外駐在員は「非居住者」となります。
◆所得税について
基本的に非居住者となった場合、海外勤務でもらった給料に関して、たとえ日本本社から支払われていても所得税は非課税となります。ただ一時的に日本に帰国していた場合(コロナでの帰国や出産の影響で一時帰国後日本本社に勤務した場合等)に日本本社から支給された給与は国内源泉所得として課税されてしまいます。
また海外現地法人に駐在する事となった日本本社の役員に関しては、たとえ非居住者として海外で勤務したとしても、国内源泉所得として役員報酬に所得税が課税されます。ですので海外駐在員がどのような役職身分で派遣されるかによって所得税の課税対象が異なりますのでよくご注意して頂ければと思います。
海外駐在が決まり、非居住者として出国する際には、その年内で日本本社からもらっていた給料の年末調整をしなければなりません。当年度の1月1日から海外に出国する最後の給与までに支払われた給料を基に年末調整の手続きを会社はしなければなりません。毎年年末に行われる年末調整と同様、扶養控除申告書や保険料控除証明書等を対象の海外駐在員からもらうようにし速やかに年末調整手続きを行いましょう。
海外駐在員が日本に帰国し居住者となった場合は、その居住日以降最初に支払われた給与から12月に支給された給与までを国内で支払われた給与として年末調整をしなければなりません。居住者となる前の当該年度の非居住者期間に国内不動産の賃貸料収入等国内源泉所得があった場合は、その所得と帰国後の国内給与を合算して従業員自身が確定申告を行う必要があります。
◆住民税について
住民税は毎年1月1日時点で国内に住居がある都道府県と市町村に支払う税金であり、前年の1月1日~12月31日の間の所得を基に計算されます。そして海外駐在のタイミングにより住民税を支払い方の実務が異なります。
例えば、駐在開始日がその年の1月~5月であれば、
・前年度の住民税は会社の給与で一括控除・納付し、今年度の住民税は会社の給与で一括控除もしくは個人で支払う形(普通徴収)に切替えて、納税管理人に支払いを委託する。
駐在開始日がその年の6月~12月であれば、
・前年度の住民税は会社の給与で納付済なので、今年度の住民税のみ会社の給与で一括控除もしくは個人で支払う形(普通徴収)に切替えて、納税管理人に支払いを委託する。
という形となります。住民税はその年の1月1日に住民票がある市町村宛に課税されるので、その年の後半に海外在住になったからといってお住まいだった市町村の住民税の納付義務は免れないのでご注意いただければと思います。
ちなみに納税管理人とは、このような海外在住となった事で非居住者自身の確定申告書の提出や、税務署等からの書類の受け取り、住民税の納付や還付金の受け取り等が困難になる事から、その納税義務を果たすために選任する人です。
納税管理人は個人・法人どなたでも構いませんが、税務署やお住まいの市役所に納税管理人の届出書を提出する必要があり、また非居住者の納税地を所轄する場所での納税対応をする事になるため、非居住者とあまりに離れた場所に住んでいる方を納税管理人に選任すると手続きが煩雑になるのでご注意ください。
今回は所得税、住民税について一般的な概要をお伝えしましたが、会社の海外駐在員の派遣形態や現地法人からの給与形態等で本税務手続きは大きく異なりますので、より詳しい事は税理士や公認会計士等の税務の専門家の方にお聞きいただければ幸いです。
今回は、日本企業で勤務する海外駐在員の国内での所得税や住民税はどうなるのかについてお話させて頂きました。また何か不明点等あれば弊社に何なりとご相談くだされば幸いです。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。
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