こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は日本企業で海外駐在員として派遣され、勤務する方や、日本を飛び出して海外勤務となった方が、気になる事項の一つである「海外での年金制度について」をお話したいと思います。
前回のニュースでもお伝えしましたが、社会保障協定を締結していない国で勤務をした場合や、社会保障協定国での勤務だが5年を超えて勤務する事となった場合には、現地赴任国での年金制度に加入する必要が出てきます。
海外勤務が短期間、長期間どちらになるかに関わらず、現地国の年金に加入する事となり、現地国での年金をせっかく支払ったあげく、将来加入していた分の年金が受給できなかったりするとがっかりしてしまいますよね。
今回は日本と海外の年金制度の違いについて比較し、いざ海外勤務となった際にも、年金制度のしくみを理解する事が出来るようになる事で、読者の方が余裕をもって今後のライフプランを設計する事が出来るようになれれば幸いです。
まず、日本の年金制度についてお話したいと思います。(今回は老齢年金についてのみお話します。) 日本の年金制度は「二階建て構造」と呼ばれております。二階建て構造の1階部分は基礎年金です。20歳以上60歳になるまでに全国民が支払う年金です。
この基礎年金は、自営業者であれば国民年金(2022年3月現在 月額16,610円)を支払い(第1号被保険者)、厚生年金加入の会社勤めの方であればその期間給料の額に応じて会社と従業員で折半して保険料を支払います(第2号被保険者)。厚生年金加入の会社勤めの方の配偶者で年収ベース130万円未満の方(第3号被保険者)は、被扶養者として保険料の支払いを免除されながら国民年金に加入するしくみとなります。加入最低期間は10年となります。
二階建て構造の二階部分は厚生年金です。上記厚生年金加入の会社勤めの方、公務員の方、私立学校教職員共済制度の加入者が対象になるもので、給料の額や賞与の額に応じて毎月会社と従業員で折半して保険料を支払うものです。厚生年金に加入できる期間は在職中から70歳になるまでであり、20歳未満60歳以上の期間も報酬比例部分として厚生年金が算出されます。加入最低期間は1か月以上となります。
年金加入者の生年月日により、年金の加給年金や振替加算等の仕組みが異なり、一概に言えませんが、自営業者が40年間国民年金に加入して将来65歳(*2022年3月時点)でもらえる月額の年金額を1とすると会社勤めの方がもらえる年金額は約3と言われています。(報酬額や賞与の多少によって異なります。)
これは、上記の日本の年金制度の仕組みによるもので、会社員が一般的に「安定」と言われている所以でもあります。
それでは本題である、海外の年金制度についてお話していきたいと思いますが、これは世界各国を比較してもシステムが大きく違います。特にシステムが違うと思われる3点として、
➀会社勤めか自営業か関係なく報酬比例型の年金
②任意加入できる国々もあり
③支払う保険料は報酬比例だが、年金給付額が一定の所もあり
が挙げられます。
全国民が職業に関係なく報酬の額を基に年金額を決めている国もあります。(例:イギリス)また、自営業者や専業主婦(夫)、外国人労働者等、年金に加入しなくても良い国もあります。(例:東南アジア、ドイツ)
また前回のニュースでもお話させて頂きました、日本と社会保障協定を締結している国に関しては、その国に5年以内で派遣されている間は赴任国の年金に加入しなくても良く、5年を超えて派遣された場合でも赴任国で加入した年金が日本の年金加入期間に合算される制度があります。
今回は、「海外での年金制度」についてお話させて頂きました。年金制度は日本だけでなく多くの海外の国でも、支払った保険料が各自将来もらえる年金額となる「積立方式」ではなく、国民全員が支払った保険料を今現在年金がもらえるべき方に再分配していく「賦課方式」をとっている国々が多いです。
年金制度は国民の納税義務の一環で、各国の政治経済の動きによりシステムが急に変わる事も多いので、赴任国がどこなのかによって、現地国の年金制度がどうなるか考えたり、情報収集したりする習慣をつける事がとても重要かと思います。
また今回のお話させて頂いた中で何か不明点あればいつでも弊所にお問い合わせくださいますようお願いいたします。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。
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