こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は日本企業が外国人労働者を雇用する上で利用する機会が多い「技能実習制度」の正しい進め方(後編)についてお話していきたいと思います。本日は実際に職場で技能実習生を受け入れる際の注意点について重きを置いてお話致します。
前編でお伝えしたとおり無事に入国できた技能実習生に対してその後入国後研修を行う必要があります。監理団体の研修センターで実施されるパターンが多く、日本語の学習、日本社会で生活する上での基本的な知識、技能実習中にトラブルがあった際の連絡方法や相談窓口、関連法律の勉強をしてもらいます。
入国後講習に関しては技能実習を行うに値するレベルに到達させるための研修の為、実習実施者(雇用者)が行うのではなく、監理団体が行うものである為、会社の賃金の支払い義務は発生しません。
入国後講習は来日する前に実施している場合は、来日の講習数を減らす事が出来、雇用者での実地研修の時間が増えますので、あらかじめ監理団体にどのように技能実習を進めるかを確認する事が宜しいかと思います。
そして、ようやく技能実習生の実地研修となるのですが、研修という名目であっても実際の業務に従事させながら研修を行うOJT的なものとなるため、会社は技能実習生に対して賃金の支払い義務が発生します。
当然ながら、1日8時間、週40時間を超えた勤務や深夜残業、法定休日の出勤に関しても労働基準法で定められる割増賃金を支払う義務があります。
賃金を支払う以外に研修生を雇用という形式上研修させるため、法定の各種社会保険(労災保険、雇用保険、健康保険、厚生年金保険)に加入させる必要があります。
技能実習生を雇用する上で経営者の方から聞かれるのは、「技能実習生はどうせ母国に帰ってしまうのになぜ社会保険に加入させなければならないの?」という質問です。
このように質問される経営者の気持ちもよく分かりますが、上記質問にずばり答えますと、「どの保険も労働者の保護を行う意味に重きを置かれている保険だから」です。
労災保険についても、労働者は使用者からの業務命令に就業時間中は基本的に従わなければならないため、業務中の災害に関しては労働者が防ごうとしても、防ぐことが出来ない為必要です。
雇用保険に関しても、例えば技能実習中に解雇されたり、技能実習が中断してしまったりした場合に、各種日本の法律で技能実習生が保護されない状況の場合でも、基本手当を受給できるように実習生のセーフティネット作りの意味合いで必要です。
健康保険に関しても国民皆保険の趣旨から、現役世代の労働者同士でお金を拠出して、高齢者を扶助する賦課方式を取っている意味でも必要ですし、厚生年金に関しても母国を離れて働いている間も、自身が将来現役を退いた後の年金の積み立てが出来るようにする意味で重要です。
また上記で先述しました通り、基本的には技能実習は研修という名目の為、1日8時間、週40時間を超える残業はしないのが原則ですが、万が一残業をしてしまう場合に備えて時間外、休日労働に関する協定届(36協定)の届出や変形労働時間制の導入等も会社は実習生の研修と同時に進めなければなりません。
また他にも各種雇用契約書類や就業規則等の書類についても必ず整備しましょう。雇用契約については労働条件通知書という形で技能実習生にどのような労働条件で雇用するかを明示するようにしましょう。出来れば下記リンクの「外国人労働者向けモデル労働条件通知書」を使いながら、日本語で一方的に労働条件を伝えるのではなく、技能実習生と相互に条件を理解し合えるような説明を行う事を心がけましょう。
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/leaflet_kijun.html
また外国人に賃金を支給する際には、総支給額と手取り額の違いについてしっかりと技能実習生に説明するようにしましょう。海外では総支給額での労働条件が通常ですので、実際に給与明細を作成して給与を実習生に振り込む際に「なぜこんなに社会保険や所得税等が控除されているのか」と手取り額が総支給額に対して少なくなっている事に驚かれる方が多いです。
また就業規則に関しても、10人未満の会社に関しては作成の義務がありませんが、休職中や解雇のルール等、技能実習中に起こりうるトラブルに対して会社を守るためにも、技能実習生を雇用する際と分かれば作成頂く事をお勧めします。(監理団体から作成するよう指導されるところもありますので都度監理団体とコミュニケーションを取って頂ければと思います。)
厚生労働省管轄の雇用関係助成金でも人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)が創設され、外国人社員向けの就業規則整備費用の補助制度もあるので是非ともご利用いただければと思います。
本日は「技能実習制度」の正しい進め方(後編)についてお話させて頂きました。技能実習制度をうまく進める為には、細かい雇用条件の整備や労務管理等を監理団体に全て任せてしまうのではなく、企業が法律知識や実習制度を円滑に進めるためにやるべき事をしっかりと理解した上で、技能実習生が長期的に勤務してもらえるような職場を主体的に作っていけるようにしていく事が大事です。
弊所でも外国人技能実習生の雇用に関する相談を受け付けておりますので、いつでもお気軽にお問い合わせください。
執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。
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