【第257回】『労務管理Q&A~「社員のやる気」を高めるためにどうすれば良いか?③~』
- 田村陽太
- 5月2日
- 読了時間: 4分
更新日:5月9日

こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『労務管理Q&A~「社員のやる気」を高めるためにどうすれば良いか?③~』についてお話ししたいと思います。
前回は、【社員のやる気を高めるために、会社側として大切なこと】として、以下の3点をお伝えしました。
① 上司からの指示や業務内容について、目的や背景をしっかり伝えること
② 指示した業務の進捗や成果について、必ずフィードバックを行うこと
③ 現在の立ち位置と今後の目標(「今」と「未来」)を都度明確に示すこと
今回は、このうち③「現在の立ち位置と今後の目標」について、掘り下げてお話ししていきたいと思います。
①②は、日常業務において上司が従業員に業務指示を出す際に意識すべき、いわばOJTで対応すべき内容です。
一方で③については、日々のOJTとは少し異なり、定期的な面談の場で上司が意識すべきポイントとなります。
面談の際に従業員に伝えるべきは、「今の状況」と「これから目指す未来の姿」です。
「今」の状況を伝える3つの視点として重要な事は、
(1)所属する部署・役職内での立ち位置
(2)会社全体における一社員としての役割
(3)本人の能力や意欲など、個人としての現状
となります。
まず(1)についてですが、会社の部署ごとに掲げる目標や役割の中で、その従業員にどのような使命・期待があるのかを明確に伝えることが重要です。
また、その役割は経営方針の変化や、従業員の異動・昇格・退職などによっても常に変化します。
次に(2)は、会社全体として「目指すべき社員像」や「就業態度」など、いわば模範的な社員としての基準と現状とのギャップについて伝えることです。
これは、他部署での成功例やトラブル事例などを踏まえて伝えると、全社的な視点が従業員にも伝わりやすくなります。
そして(3)は、入社時に把握していた従業員のポテンシャルや目指していたキャリア像に対して、現在の仕事ぶりにどのようなギャップがあるのかを共有することです。
このように「今」の状況を多面的に確認したうえで、「これからどうなってほしいか」という未来像を、上司の視点と従業員自身の視点の両方から目標設定することが非常に重要です。
その為、上司視点での目標設定として重要な事は、単に目の前の業務姿勢だけを見るのではなく、
自社が目指す方向性や中長期的ビジョン
各部署に求められている役割
その従業員がこれまで歩んできたキャリア
といった広い視野と理解を持った上で行う必要があります。
そのためには、経営層や上司は普段から自部署以外との交流や情報共有、人事部門との連携などを積極的に行い、会社全体の動きを把握する姿勢が求められます。
一方、従業員自身に目標を設定してもらう際には、次の2点がとても大切です。
「相談」:他者のフィードバックを受けたうえで、目標を一緒に考える
「同意」:目標内容に納得し、その達成を自分の責任と認識する
人は、自分一人で目標を立てると現状を過大評価したり、逆に控えめすぎる目標にしてしまったりする傾向があります。だからこそ、上司や第三者との対話を通じた「相談」を挟むことで、現実的かつ成長につながる目標設定が可能になります。
また、「同意」とは、目標の内容に納得した上で、「この目標を達成することは自分のタスクである」と責任を持って取り組む状態を指します。
目標設定は「作って終わり」にしない事が重要です。目標を立てただけでは意味がありません。重要なのは、それが日常業務で活用され、実務に根付いたものとして運用されることです。
せっかく目標を立てても、「とりあえず書いただけ」「一度も見返していない」という状態では、やる気につながりません。
だからこそ、従業員と上司が一緒にコミットできる目標をつくり、日々の業務の中で振り返り、調整していくことが不可欠です。
本日は『労務管理Q&A~「社員のやる気」を高めるためにどうすれば良いか?③~』についてお話しました。次回も引き続き、続編をお届けしたいと思います。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
社会保険労務士事務所Sun&Careerホームページはこちらです。
インターネットラジオ・ポッドキャスト番組「企業と従業員の働き方を考える 『社労士ラジオ サニーデーフライデー』」のリンクはこちらです。
社労士労務顧問、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター、ポッドキャスト番組制作等のご依頼はお問い合わせフォームまでご連絡ください。
コメント