
こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『2025年労働法関連法改正と企業の労務管理で対応すべき事⑤』についてお話していきたいと思います。
前回までは【2025年中に予定されている育児・介護休業法の改正】をお話させて頂きましたが、今回からはその他雇用関連法の法改正部分である、
②雇用保険法の改正
③障害者雇用促進法の改正
➃高年齢者雇用安定法の改正
について順次ご説明させて頂きます。
まず②ですが、大まかな改正部分としては以下が挙げられます。
(1)自己都合離職者の給付制限期間の見直し
(2)高年齢雇用継続給付の見直し
(3)出生後休業支援給付の創設
(4)育児時短就業給付の創設
(5)育児休業給付金の支給対象期間延長時の提出書類の変更
まず(1)ですが、この2025年4月1日から、自己都合離職者の失業給付(基本手当)の給付制限期間が短縮されます。従来は失業後、ハローワークへ求職の申し込みを行った日から7日間を待期期間として、その待期期間から2カ月までは自己都合での退職の方の場合、基本手当を受給出来ませんでした。
それが、この4月からは給付制限期間が1カ月に短縮されます。さらに離職期間中や離職日前1年以内に自ら教育訓練を受けた場合は給付制限が解除され、失業手当が早期に受給できるようになります。ちなみに、この教育訓練とは、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練等が対象となります。
この法改正を行う背景としては、何らかの都合で退職してしまった労働者に対して早期に失業手当が受給できるような制度にする事で、早い就職活動への意欲を促進させる意味合いがあると個人的には思っております。
また、退職後早期に失業手当が受給できる事で、その会社で従業員を働かせる上で生産性が上がっていなかった場合でも、他の労働者を雇用する事で会社での生産性を以前より向上させる等、企業間での雇用の流動性を高める事に繋がると個人的には思っております。
従来は、一つの企業で定年まで勤めあげる労働者が多かったですが、現在は会社での競争力の低下やそれに伴う支給する賃金や福利厚生の低下等により、会社の経営体力の都合等、従業員を雇用し続ける事も難しくなってきました。
その影響からか、労働者も一つの企業で勤めあげるよりも労働者自身の能力を評価してくれる会社を、現役世代のうちに転々と変え、自身のスキルと給与をアップする事を目指す方も増えてきていると個人的には感じております。
このような雇用の流動性を促進し、労働者自身がよりスキルアップを目指すことが出来、それに伴い、企業の競争力をさらに高める事を支援する事を目的に、今回法改正されたのだと個人的には思います。
次に(2)ですが、自社社員が60歳到達等時点に比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける60歳以上65歳未満の一定の雇用保険一般被保険者に給付金を支給する制度を高年齢雇用継続給付と言います。これは、自社で働く高年齢者の就業意欲を維持し、65歳までの雇用の継続を促進することを目的としています。
その高年齢雇用継続給付の支給率が、最大10%に縮小されたという法改正です。今まで60歳到達時の給与と比較して60歳以降の給与が61%以下に低下した場合は、60歳以降各月に支払われる賃金の15%が上乗せ支給されましたが、今回の法改正で64%以下に低下した場合に賃金の10%を上乗せ支給する形に法改正となりました。
この法改正は現在全企業で対象となっている、同様の職務、職責を担っている正社員やパートアルバイト、契約社員、嘱託社員に関しては、会社は公平に給与を支給するようガイドラインが出された、同一労働同一賃金が影響していると個人的には思います。
現在は全企業65歳までは従業員が希望すれば雇用しなければならない制度となっておりますが、今後生産年齢人口の低下により、70歳や75歳と高年齢者を企業で雇用しなければいけない世の中になってくると思います。
そういった中で、60歳に到達した事で嘱託社員として軽易な職務や職責を担ってもらい、雇用を行うのではなく、高年齢者も今の現役世代と同様に高い職務と職責で勤務してもらう事で、会社は高年齢者に対して高い給与を支給してもらう事を政府からのメッセージとして、法改正がされたのだと個人的には思います。
本日は『2025年労働法関連法改正と企業の労務管理で対応すべき事⑤』についてお話させて頂きました。次回も続編をお話ししていきたいと思います。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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