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  • 執筆者の写真田村陽太

【第29回】日本企業が海外駐在員の労務管理を行う上で重要な事(⓪概論)



こんにちは。サンキャリア代表の田村です。



今週からは、「日本企業が海外駐在員の労務管理を行う上で重要な事」に関してお話していきたいと思います。




日本企業が日本のマーケットを飛び出して、海外市場の獲得を目的に海外投資を行う例や、日本企業の技術力や日本の伝統文化に帰する日本ブランドを海外に発信したいという理由から海外投資を行う等、日本企業が営業事務所や工場を設立して海外で営業活動を行う例が増えてきております。



その際には日本本社で長年勤務し、熟練した従業員を海外の現地法人に派遣して、海外駐在員として勤務させるのが日本企業の海外営業活動の進め方の一つです。この海外駐在員の労務管理や人事評価をしっかりと行う事が、日本企業の海外市場の攻略に重要な点と言っても過言ではありません。




日本企業で雇用した熟練した従業員を駐在員として海外に派遣する上で、日本企業の人事部が行うべき事として以下が挙げられます。




【海外駐在員を派遣するまでの人事部がすべきステップ】


①就業規則上や雇用契約書により全従業員に対して海外駐在派遣させる事の周知・合意

➁海外駐在員勤務時の給与待遇・福利厚生・職務内容・人事制度等の社内設計

➂海外派遣させる対象従業員の選定

④海外派遣候補従業員への海外派遣に関する説明・合意の取得

⑤居宅探しや日本人学校探し等対象従業員・扶養家族の生活支援等サポート

⑥現海外駐在員からの業務進捗管理・次期駐在員への業務引継ぎ・人事部での面談立会い

⑦給与支払いや健康保険の療養費申請・税務手続き等の毎月の税務・労務管理

⑧海外駐在員の日頃の健康管理・メンタルヘルス管理




が主となります。




現代では、海外駐在員のように、従業員が海外で勤務している場合でもZOOMやメール等で日々の業務の進捗管理や健康管理等も以前に比べて行いやすくなりましたが、四六時中駐在員の働きぶりを管理する事は難しく、完璧な労務管理は難しい事項です。



また、日本本社に対して意見や不満、今後の要望等、海外駐在員が日々思っている事や抱えている事全ての話が本社に上がってくるかと言えば不可能に近いです。




海外駐在員として派遣される従業員は、日本の中小企業・大企業問わず、比較的日本本社の中でも社内の業務に精通し、また英語や外国語等を駆使し、海外のビジネスマンとも交渉を行う事が出来る等コミュニケーション力に長けている社内でも優秀な社員が派遣されることが多いです。



第20回のニュースでも書きましたが、そのような会社のホープである駐在員が、日本本社の常に目が行き届かない海外の環境で勤務する事となると、業務の抱え込みやストレスによるメンタルヘルス不調や体調悪化を引き起こし、駐在員の業務効率の低下や海外での売上減少に繋がる事が多々見られます。



海外駐在員は海外で働いているからと日本の労働法を遵守しなくても良いわけではありません。労働契約法第5条では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定めております。



日本国内で勤務する従業員だけでなく、海外で働く従業員にもこの法律が適用されることは過去の裁判例を見ても良く分かります。日本国内の従業員だけでなく、海外駐在員に関しても日本企業は安全に働けるよう適切な労務管理を行わなければなりません。




海外駐在員が安全に勤務できるように企業が配慮する事、すなわち「安全配慮義務」を会社が履行できなければ、海外駐在員から企業に対してメンタルヘルス不調での自殺や業務災害等に巻き込まれたことによる損害賠償請求を起こされる可能性も高くなります。



また、海外で活動する日本企業は、日本で活動するよりも海外での方がブランド力もある事から、一度安全配慮義務違反で訴訟問題となると忽ち海外現地での風評被害をまともに受けてしまい、海外市場での売上減少や現地社員の採用力の低下、現地での運営オペレーションが難しくなったり、海外の役所や公共機関への事業関連での許認可申請がスムーズに行きにくくなったり等のデメリットもあります。



そのため、長期的な視点から、海外駐在員の労務管理が企業の海外での営業活動の成功を導く上での重要な事項である事を理解しておきましょう。



以上で、日本企業が海外駐在員の労務管理を行う上で重要な事に関する概論をお話ししました。次回からは上記で挙げました、【海外駐在員を派遣するまでの人事部がすべきステップ】に関して①から順に詳しくお話していきたいと思います。




執筆者:田村陽太(社会保険労務士)



産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。



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