【第331回】『助成金を活用する前に会社が考えるべき事』


こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『助成金を活用する前に会社が考えるべき事』というテーマでお話ししたいと思います。
会社で従業員を雇用していると、厚生労働省の雇用関係助成金を活用する場面があるかと思います。
ハローワークや労働局等の公的機関から案内される事もありますし、経営者仲間や他の人事担当者から「こういう助成金があるらしい」と聞いて、申請を検討する会社もあると思います。
雇用関係助成金は、従業員を雇用している会社が負担している雇用保険料などを背景に、雇用の安定や職場環境の改善、能力開発などを後押しする為の制度です。
その為、要件を満たしているのであれば、会社として積極的に活用して良いものだと考えています。
ただし、「助成金は最初から狙って取りに行くべきものなのか?」と聞かれると、私は少し違うと感じています。
助成金は、会社が進むべき方向に向かう中で、必要な取り組みを後押ししてもらうものです。
今回は、助成金との向き合い方について、私なりに大切だと思う3つの視点を整理してみたいと思います。
① まず法律上できていない事を整える
助成金には様々な種類があり、「こういう制度を導入する」「こういう取り組みを行う」事で受給できるものがあります。
ただ、ここで最初に考えるべきなのは、今会社で出来ていない事が、法律上やるべきことなのか、それとも法律上は問題ないが、さらに良い取り組みをする話なのかという点です。
例えば、労働時間管理、賃金支払い、就業規則、雇用契約書、育児介護休業制度など、会社として本来整えておくべき事があります。
もし法律上できていない部分があるのであれば、まずはそこを整える事が先です。
助成金の申請に力を入れている一方で、基本的な労務管理が整っていないという状態は、会社として非常に危ういと思います。
助成金は、既存の自社の制度をより良くする為の後押しです。
法律上やるべきことを放置したまま、助成金だけを取りに行くものではありません。
まずは、自社の労務管理で不足している部分を洗い出す
その上で、さらに良い制度にしていく段階で助成金を検討する
この順番が大切だと考えています。
② 一時金と将来のランニングコストを比較する
助成金は、一時金として支給される事が多い制度です。
一方で、会社が制度を変えると、その後も継続的なコストが発生する事があります。
例えば、賃上げを行えば、毎月の人件費が増えます。
福利厚生制度を新設すれば、翌年以降も運用コストがかかります。
手当を創設すれば、対象者が増える事で支給額が膨らむ可能性もあります。
もちろん助成金が支給される事で、導入時の負担は軽くなります。
ただし、その新しく入れた制度を5年後、10年後も続けられるかどうかは、会社が自分で考えなければなりません。
「助成金がもらえるからやる」のではなく、
この制度は、助成金がなくても続ける価値があるのか
将来の人件費や運用負担を考えても、自社に本当に必要な制度なのか
をしっかり確認する事が大切です。
助成金の金額だけを見て制度を導入すると、後から会社の負担が重くなる事があります。
だからこそ、一時的な受給額と、将来的なランニングコストを比較して判断する必要があります。
③ 会社が目指す方向と一致しているかを見る
助成金を活用する上で最も大切なのは、その取り組みが会社の目指す方向と一致しているかどうかです。
例えば、従業員の定着率を高めたい。賃金制度を見直したい。育児や介護と仕事を両立しやすい会社にしたい。非正規雇用の方に長く働いてもらいたい。
そうした会社の課題や理想が先にあり、その延長線上に助成金があるのであれば、積極的に活用すべきだと思います。
一方で、助成金を受ける事が目的になってしまうと、会社の目指したい方向と実態が合わない制度を作ってしまう事があります。
制度を作ったものの、現場で運用できない
従業員に新制度がうまく伝わらない
将来的なコストだけが会社に残ってしまう
こうなってしまうと、本来の助成金の目的から外れてしまいます。
助成金のラインナップは、国が「こういう取り組みを企業に進めてほしい」と考えているメッセージでもあります。
その意図を理解する事は非常に大切です。
ただし、会社を経営しているのはあくまで会社自身です。
自社の経営状態、従業員数、将来の方向性を踏まえた上で、本当に必要な取り組みかどうかを考える事が重要です。
まとめ 助成金は会社づくりの目的ではなく補助である
助成金は、要件を満たしているのであれば、積極的に活用して良い制度です。
会社も雇用保険料を負担している以上、適切に使えるものは使ってよいと私は思います。
ただし、助成金を狙って取りに行く事が先に来てしまうと、本来やるべき労務管理や会社づくりが後回しになる事があります。
大切なのは、
まず法律上できていない部分を整える事
一時金と将来のランニングコストを比較する事
会社が目指す方向と一致しているかを見る事
この3つです。
助成金は、会社の方向性を決めるものではありません。
会社が進むべき方向を決め、その実現を後押しするものです。
従業員が定着し、安心して働き、会社も無理なく成長していく為の取り組みと助成金の目的が重なるのであれば、非常に有効な制度になります。
サンキャリアとしても、助成金を取る事自体を目的にするのではなく、会社の労務管理や組織づくりに本当に必要な取り組みを見極めながら、活用を支援していきたいと考えています。
本ニュースをご覧になり、人事労務管理に関するご相談・ご質問等がございましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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