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  • 執筆者の写真田村陽太

【第89回】社会保障協定とは何ですか??


こんにちは。サンキャリア代表の田村です。



本日は日本企業で海外駐在員として派遣され勤務する方や、日本を飛び出して海外勤務となった方が、気になる事項の一つである健康保険や年金制度に関わる社会保障協定についてお話していきたいと思います。



◆社会保障協定とは



社会保障協定とは、これまで日本で勤務していた際に加入していた社会保障制度(労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金等)が海外勤務となった事で脱退もしくは継続加入となった際に、海外赴任国での社会保障協定制度の加入による二重払いや海外赴任となった期間の年金加入が出来なくなる問題を解消するために、日本と独自に協定を結んだ二国間での社会保障制度に関する協定です。



日本年金機構から出ている社会保障協定制度の概要については以下のリンクをご覧ください。




日本と現在社会保障協定を締結している国は23か国(うち署名済未発行国3か国)です。



協定が発効済の国

ドイツ/英国(イギリス)/韓国/アメリカ/ベルギー/フランス/カナダ/オーストラリア/オランダ/チェコ/スペイン/アイルランド/ブラジル/スイス/ハンガリー/インド/ルクセンブルク/フィリピン/スロバキア/中国の20か国



署名済だが協定が未発効の国

イタリア/スウェーデン/フィンランドの3か国となります。



社会保障協定の内容として、協定国同士の間でもどの社会保障制度までを包括して二重加入しなくて良いかのルールが大きく異なりますので、上記社会保障協定国に派遣される場合は日本国との協定内容をよく確認しておく必要があります。



例えばフランスやスロバキアでは、日本人が現地に派遣される際は、労災保険も二重払い防止の対象となり、派遣される日本人は労災保険の加入が任意となります。その為日本国内で労災保険の特別加入の手続きをしておかなければ、万が一海外赴任中に労働災害が起きた際も保障されない可能性がありますので注意が必要です。



日本企業で社会保険に加入した状態で社会保障協定国に赴任した場合、5年以下であれば日本国内の社会保険に加入、5年を超えれば現地国の社会保障制度に加入となります。



社会保障協定国であれば、日本国内で加入していた年金や現地赴任国で加入していた年金の加入期間をそれぞれ日本・赴任国の年金加入期間として通算する事が出来ます。



ただ、英国(イギリス)、韓国、イタリア、中国に関しては、上記通算ルールがありませんので、現地国で支払った年金はあくまで海外赴任国での年金制度のルール・支給加入期間と照らし合わせて支払われます。



その為海外駐在員に対する給料の支払に関しては、通算ルールが無い場合の将来の年金額の見込み額を試算しながら、給与額を決定する事が企業内の海外駐在員同士の待遇に対する不満や不平等感をもたらさず、従業員の海外駐在へのモチベーションを高める事が出来ると個人的には考えています。



また上記説明しました、海外派遣期間が業務の都合上5年を超え現地国の社会保障制度に加入するとなった場合に、日本国内の厚生年金を脱退する事となり、日本の厚生年金の受給額に影響してしまう事があります。(期間は通算されますが、将来の日本の年金額には合算されない為。)



よって、厚生年金保険特例加入被保険者資格取得申出書を出す事で、日本の社会保険に特例的に加入する事も出来、日本で将来的に支給される年金額の低下を防ぐことが出来ます。



社会保障協定国に派遣された際には「適用証明書交付申請書」を、赴任国での駐在が5年を超えて日本での社会保障にも加入し続けたい場合は「厚生年金保険特例加入被保険者資格取得申出書」を管轄の年金事務所に提出する必要があります。



これらの手続きが遅くなってしまうと、現地国での社会保障加入調査の実施や、本来加入できるはずだった加入期間が遅くなってしまう等、海外派遣者自身の不利益に繋がってしまう事もありますので、ご注意ください。



今回は、日本と海外での健康保険・年金制度の二重払いを防ぐ為の協定である「社会保障協定」についてお話させて頂きました。社会保障協定国での勤務は、日本国内での社会保障制度の維持をどうするか、駐在員の給与額の設定、派遣期間をどうするか、駐在員同士での不平等をどう解消するか等、人事労務管理の事項の中でも非常に難しい内容です。



また何か実務的に不明点等あれば弊社に何なりとご相談くだされば幸いです。





執筆者:田村陽太(社会保険労務士)



産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。



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