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執筆者の写真田村陽太

【第117回】海外子会社から日本本社への出向で注意すべき事(前編)


こんにちは。サンキャリア代表の田村です。



本日は「海外子会社から日本本社への出向で注意すべき事(前編)」についてお話していきたいと思います。



海外事業を積極的に行っている日本企業では、現地社員の就業意欲の向上等のモチベーションアップの理由やより責任ある業務や職務に就いてもらうための能力アップの為に、海外支店や海外現地法人の社員を日本本社に連れてきて働いてもらう事を考える企業様が増えてきています。



今までは日本本社の社員が海外出張に行ったり、日本人社員を海外に赴任させる駐在員制度を導入していたりと、海外事業の根幹を主に日本人社員が担っていました。



ただ今後は現地のローカル人材をしっかりと短期間で日本本社の考え方や経営方針までしっかりと理解してもらい、それを踏まえて日本企業の一グループとしての海外事業の中心的な業務を担わせて任せていこうとする重きが大きくなっている事も影響しているかと思います。



今までは海外の子会社の籍となっていた外国人社員を、日本本社で勤務させる際にどのような点に注意しなければならないかを本日は労務の視点でお話ししたいと思います。



まず給与・福利厚生等の労務についての注意点ですが大きく3点あります。



【給与・福利厚生等の労務での注意点】

① 日本本社の日本人社員と同等の金額を支払う必要がある事

② 給与待遇によっては母国と日本で二重に社会保険に加入する必要がある事

③ 休日・休暇、給与支払日等の違いについて十分に説明する必要がある事


が主に挙げられます。それではこれらを細かく説明していきます。



① 日本本社の日本人社員と同等の金額を支払う必要がある事


これは主には日本での在留資格を申請する際に必要となる条件であることが第一にあります。海外籍の社員を日本本社に転勤させて勤務させる場合は、主に在留資格「企業内転勤」もしくは「技術・人文知識・国際業務」で来られるパターンが多いです。



在留資格の申請の際には雇用契約書の添付が必要となるので、勤務させる業務内容に一番近い日本人社員と必ず同等の待遇で雇用する必要があります。そのため、海外子会社の給与レベルと比較して日本本社で働く事になったことで給与額が大幅に増額された場合は、日本本社での勤務を終了し海外子会社等に帰任した際の給与待遇をどのように決定するかを従業員と十分に相談する必要が出てくるので、日本本社での勤務の給与設計は非常に煩雑となります。



ですので、一番良いパターンとしては、日本本社での勤務を終え現地海外子会社に帰任する際は、ある程度の職位への昇進を行う等当該外国人社員の将来のビジョンを考えて給与設計を行うことが重要です。



② 給与待遇によっては母国と日本で二重に社会保険に加入する必要がある事


これは日本人駐在員が海外子会社に駐在する際の給与設計を人事部がどうしているかを考えてみれば分かりやすいかと思いますが、海外で勤務したまま自国の社会保険(主に年金制度)を継続させたい場合、日本での就業時間がどれ程かや、出向元、出向先でどのように給与額を分担して支払うか、そして日本と社会保障協定を締結している国なのかによっては、母国と日本それぞれで社会保険に加入しなければならないという課題も発生します。



日本への出向勤務と同時に、今まで加入していた社会保障の内容よりも待遇が劣ってしまう事も可能性として考えられます。ですので、外国人社員が不満に思う事を防ぐためにも、母国での社会保険制度の内容がどうであったか等も含めて、外国人社員を日本本社へ転勤させる前には十分に調査し、従業員本人にもしっかりと面談し説明しましょう。



本日は「海外子会社から日本本社への出向で注意すべき事(前編)」についてお話しました。次回は中編についてお話ししたいと思います。





執筆者:田村陽太(社会保険労務士)



産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。



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