【第263回】『労務管理Q&A~外国人材の定着には何が本当に必要なのか?②~』
- 田村陽太
- 6月13日
- 読了時間: 4分
更新日:6月18日

こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『労務管理Q&A~外国人材の定着には何が本当に必要なのか?②~』についてお話ししたいと思います。
前回は、【外国人材の定着に必要な3つの視点】として、以下の3点をお伝えしました。
① 自分が“歓迎されている”と実感できる情報発信や出会いの機会の提供
② 日本人社員と同じように公平に扱われていると感じられる職場環境
③ 外国人材の「穴」が出ないよう、定期的に採用できる仕組みづくり
今回は、②「日本人社員と同じように公平に扱われていると感じられる職場環境」について掘り下げてお話ししていきたいと思います。
「外国人社員=特別な存在」になっていないか?
最近では観光地などを訪れると、外国人観光客を見かける機会が明らかに増えてきました。一方で、企業の現場では「うちの会社には外国人社員がいる」というケースは、まだまだ少ないかもしれません。
そうなると、外国人社員が職場に入ってきたときに、
「日本語が話せなくて大変だろうな。助けてあげよう」
「きっと自分の気持ちは伝わっていないだろう。話しかけるのはやめておこう」
といった「良かれと思って」の特別扱いが起きがちです。
しかし、このような扱いは、当の外国人社員からすると、
「自分は下駄を履かされている」
「本当の意味で信頼されていない」
と感じさせてしまい、本来の力を発揮しにくい状況を生む原因となります。
外国人も「成長したい」「貢献したい」と思っている
日本人であっても外国人であっても、「この会社で貢献したい」「キャリアアップしたい」という思いは変わりません。
外国人社員が少数派であっても、それが「能力や志の違い」ではなく、言語や文化の違いにすぎないことを理解しておく必要があります。
極論を言えば、会社が支払う給与に対して、事業成長や職場改善にどれだけ貢献できるかという視点で見れば、日本人か外国人かというのは関係ないはずです。
「歩み寄る努力」が重要
では、外国人社員が「特別扱い」されることなく、自然体で働ける職場環境をつくるには何が必要か。
それは、日本人社員が外国人社員に歩み寄る努力をすることだと私は考えています。
ここで言う「歩み寄り」とは、「手助けしてあげること」ではありません。
むしろ、自分たちが苦労してでも、外国人社員と同じ土俵で働けるように工夫することが求められます。
例えば、
英語を共通言語として話す努力をする
英語が話せない場合でも、日本語を使う際には「結論ファースト」で伝える
日本語独特の回りくどい表現や、婉曲な言い回しを避け、ストレートに伝える
といったように、相手の文化に配慮したコミュニケーション習慣を持つことが大切です。
成果ではなく「プロセス評価」だけに偏っていないか?
外国人社員が日本企業で感じるモヤモヤのひとつに、
「成果よりも、上司や先輩に“どれだけ従ったか”で評価される」
という評価基準の存在があります。
実際、日本の職場では「空気を読む力」や「上下関係への従順さ」が重視されすぎて、
本来の職務遂行力や成果が正当に評価されないこともあります。
これは、外国人社員にとっては非常に理解しづらく、不公平に感じられる要素です。
多くの国では「ジョブ型雇用」が基本であり、「任された仕事を果たすこと」が評価基準の中心です。
そのため、職場においても、曖昧な“空気感”や“同調圧力”ではなく、役割と成果で評価する姿勢が、外国人材の定着には不可欠だと思います。
「無意識に自然体で働ける職場」を目指す
結論として、外国人社員が定着する職場とは、「無意識に自然体で働ける」環境です。
そのためには、周囲の日本人社員が、外国人社員にとってストレスになるような慣習や言葉づかい、暗黙の了解を減らしていく努力が求められます。
外国人社員が「構えずに働ける」環境を整えることで、「この会社でなら、長く働き続けたい」と感じてもらえるようになります。
本日は『労務管理Q&A~外国人材の定着には何が本当に必要なのか?②~』についてお話ししました。次回も引き続き、続編をお届けしたいと思います。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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