【第269回】『労務管理Q&A~「ポテンシャル採用」と「即戦力採用」で中小企業に向いているのは?➃~』
- 田村陽太
- 7月25日
- 読了時間: 4分
更新日:8月1日

こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『労務管理Q&A~「ポテンシャル採用」と「即戦力採用」で中小企業に向いているのは?④~』についてお話ししたいと思います。
前回は、「ポテンシャル採用」と「即戦力採用」それぞれのメリット・デメリットについてお話しし、その上で中小企業にはポテンシャル採用の方が向いている、という私の考えをお伝えしました。
そして、中小企業がポテンシャル採用を重視すべき理由として、以下の3点を挙げました。
① OJT中心の教育環境だから、伸びやすい
② 人間関係が大切なため、なじみやすさが重要
③ 経営層との距離が近いため、摩擦が起こりやすい
今回は③について、詳しくお話ししていきたいと思います。
中小企業では、大企業と比べて経営者や役員と物理的・心理的に近い距離で働くことが多く求められます。「近い距離」とは、同じオフィスで働くだけでなく、お客様に対して同じプロジェクトの中で経営者と一般社員が一緒に実務を担うことも含まれます。
また、中小企業では、かつて現場で実務を経験した人が独立して経営者になるケースも多いため、経営だけでなく実務にも精通している社長が多く存在します。
つまり、中小企業の経営者は、経営判断を下すだけでなく、事業の根幹となる実務に関しても「それはやるべきことなのか、そうでないのか」といった判断ができる人です。そうした社長と一緒に働くことが求められるのが、中小企業の職場です。
そのため、従業員には、経営者からのアドバイスに真摯に耳を傾け、その意思決定を尊重しつつも、必要なことは率直に伝える、というバランスのとれたコミュニケーション力が求められます。いわば、丁寧かつセンシティブな姿勢が必要なのです。
さらに、中小企業の経営者は、大企業の経営者と比べて年齢層が若く、ベンチャー的な気質を持つ人も多く見受けられます。そのため、社長よりも年上の従業員が在籍していることもあり、立場上は社長でも、年齢が若いために対等に接してしまうケースがあります。
しかし、いくら年齢が若いとはいえ、従業員が経営者に対して横柄な態度を取ってしまうと、組織の指揮命令系統が乱れ、実務が円滑に進まなくなる恐れがあります。
特に、他社での勤務経験が豊富な即戦力人材ほど、「もっとこうした方がいいのでは?」「なぜこんなやり方なのか?」と感じる場面も多くなるでしょう。
そうした不満や疑問を、「正論」として経営者にぶつけてしまうと、会社の空気が悪くなり、結果として組織の士気が下がることにもつながります。
たとえその主張が正論であったとしても、会社の風土や経営者の想いを否定するような言動は、事業にとってマイナスに作用することもあります。
その点、未経験者や若手社員など、職務経験が少なく、会社の風土を柔軟に吸収できる人材の方が、中小企業の経営者と近い距離で働く環境には適していると言えます。経営者の考えや職場の文化を素直に受け入れ、一緒に働きやすい関係を築ける可能性が高いからです。
会社経営には「これが正解」という明確な答えは存在しません。お客様の性格や業種、価値観によって、正しいとされる対応も変わってくるものです。ある会社で「善」とされている判断が、別の会社では「悪」になり得る。そんな相対的な世界で私たちは経営を行っています。
だからこそ、自社の中で「私たちはこれが正解だ」と全員が納得できる判断軸を持ち、それに基づいてお客様に提案していくことがとても大切です。他社事例をただ模倣するのではなく、自社の風土や実務に根ざした考えから生まれた「答え」を、自信を持って提供する姿勢が求められます。
そういった意味でも、自社の考え方を理解し、共に育っていけるポテンシャル人材を採用することは、中小企業にとって非常に有効だと私は考えています。
本日は『労務管理Q&A~「ポテンシャル採用」と「即戦力採用」で中小企業に向いているのは?➃~』についてお話ししてきました。次回も続編をお話ししていきたいと思います。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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