【第274回】『AIの発達によって人事労務や社労士の未来はどう変わる?➃』
- 田村陽太

- 8月29日
- 読了時間: 4分
更新日:9月4日

こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『AIの発達によって人事労務や社労士の未来はどう変わる?④』というテーマでお話ししたいと思います。
これまでのニュースでは、AIの発達によって人事部の業務が効率化される主なポイントとして、以下の3点をお伝えしました。
①給与計算や就業規則作成など、複雑な業務の簡素化
②メールや通知文などの文書作成業務の効率化
③従業員からの人事労務に関する相談の心理的ハードルの低下
今回は、それらを踏まえた上で、AIによって人事業務が効率化されていく中、今後社会保険労務士が担っていくべき責任や役割について考えていきたいと思います。
【社会保険労務士が今後担うべき主な役割】
大きく分けて、以下の3つの役割が重要になってくると私個人的に考えています。
①会社の人事「部」を社内で育成する
②従業員の感情面を細やかにアドバイス・フォローする
③相談対応時の企業・従業員間の“ファシリテーター”として機能する
今回はこの中で ①「会社の人事部を社内で育成する」について詳しくお話しします。
【人事部を“育成する”という発想】
従業員がモチベーション高く、組織として一体感を持って働けるようにするためには、人事部の機能がとても重要です。
社会保険労務士としては、その“人事部の機能”を社内に根付かせるための育成・指導が必要だと私は考えています。
特に中小企業(従業員50名未満など)では、「人事部門」が正式に設けられておらず、経理や総務と兼任の形で一人の社員が人事を担っているケースも多く見られます。
このような環境では、どうしても人事業務が「手続き」や「給与計算」などのルーティン作業に偏ってしまいがちです。
【“人事部の仕事”は実は多岐にわたる】
実際には、人事の業務は以下のように非常に広範囲に及びます。
・従業員からの相談対応
・休職・復職制度や評価制度の設計
・昇給・降給に伴う評価プロセスの運用
・経営層・部署間の調整業務 など
こうした業務は従業員のモチベーションや離職率に直結するものが多く、非常に繊細かつ高度な判断を伴う為、一人の担当者がすべてを担うのは困難です。
【“教える”事も社労士の使命】
その為、私たち社労士は「人事業務の代行者」として業務を代行して肩代わりするだけでなく、中小企業が自社内に人事機能を構築できるよう、育成・教育を支援する立場であるべきだと私個人的には思っています。
「人事部門がどのような視点で何をすべきか」
「どこまで業務を担えば“人事部”と呼べるのか」
「複雑業務をどう組織で支えるか」
こういった視点を、現場の人事担当者へ伝え、場合によってはマニュアルの整備や研修の実施を通じて、育成していくことが求められます。
最初は1人だった人事担当者でも、基本的な知識を持つ社員が社内に2人、3人…と増えることで、自然と“人事部”としての機能が会社内に醸成されていきます。
【代行ではなく“自走”を支援する】
よくある話で言うと、多くの社労士事務所や社労士法人は「手続き代行」や「給与計算代行」といった業務を収益の柱としています。
もちろん、これは社労士としての独占業務であり、社会的にも経済的にも重要な役割です。
しかし、それだけでは中小企業の「中にいる社員」が何をどう考え、どう動いているかを深く理解することはできません。なぜならば、その会社の事を一番理解しているのは、現場で働く従業員たち自身だからです。
だからこそ、私たち社労士は「その会社の中で人事業務をしっかり回せるように育てる」ことを重視すべきだと個人的には思います。
中小企業が自ら人事の機能を内製化できるようになり、やがて私たち社労士の手を離れても“自走できる組織”になってくれれば、それが本当の支援であり、理想的な形だと私は考えています。
本日は『AIの発達によって人事業務や社労士の未来はどう変わる?④』についてお話しました。次回も続編をお話していきます。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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