【第276回】『AIの発達によって人事労務や社労士の未来はどう変わる?⑥』
- 田村陽太
- 6 日前
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こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『AIの発達によって人事労務や社労士の未来はどう変わる?⑥』というテーマでお話ししたいと思います。
前回は、AIによって人事業務が効率化されていく中で、今後、社会保険労務士が担っていくべき主な役割として以下の3点を挙げました。
【社会保険労務士が今後担うべき主な役割】
①会社の人事「部」を社内で育成する
②従業員の感情面を細やかにアドバイス・フォローする
③相談対応時の企業・従業員間の“ファシリテーター”として機能する
今回は、3つ目の③「企業と従業員の“ファシリテーター”として機能する役割」について、詳しくお話しします。
双方向の声が届きにくい職場で、誰が橋渡しをするのか?
従業員は日々、会社の指揮命令に従いながら働いています。
業務内容や手順については、上司や先輩から指示され、それに沿って仕事を進めている人がほとんどでしょう。
一方で、「給与」「福利厚生」「労働時間」など、生活に関わる労働条件については、相談しにくいと感じている従業員も多くいます。
退職や未払い残業などのトラブルが発生したタイミングで話すことはあっても、普段から「育児休業の取得条件ってどうなっているんですか?」のような相談は、“仕事とは直接関係ないから聞きづらい”という空気があるのではないでしょうか。
会社側も“言いたいことを言いにくい時代”に
これは従業員側の心理だけでなく、会社側にも同じことが言えます。
人手不足が続く現代において、会社は従業員に対して過度なプレッシャーを与えたくないと考えがちです。
本来であれば「管理職としてのマインドセットをどう持つか」といった教育をしたい場面でも、「仕事以外のことにはあまり踏み込めない」「ハラスメントと捉えられたら困る」といった心理から、“仕事だけをお願いする関係”にとどまりがちになっています。
社労士は“通訳”として、職場に余白を生む存在に
こうした中で、社労士が果たすべき役割は、企業と従業員の“通訳”だと個人的には思います。
企業が本当に従業員に伝えたいこと、従業員が本当に会社に伝えたいこと。
その間に立ち、お互いの意見や願いを「噛み砕いて橋渡し」することが、社労士の重要な仕事です。
「会社としてできること・法律上やるべきこと・従業員が求めていること」を整理し、「この形が落としどころではないか?」と提案できる存在になる事が理想です。
弁護士と違い、“代弁”ではなく“中立支援”の立場
社労士は、法的には弁護士と異なり、企業側の代理人でもなく、従業員側の代理人でもありません。
しかしながら、企業と従業員の関係を円滑にし、働きやすい・働かせやすい環境を作るための“職場の潤滑油”としての専門家であるべきだと、私は考えています。
雑談も交えながら、対話のハードルを下げる
社労士が面談に同席することで、「これはどういう意味なんですか?」「ちょっと確認させてくださいね」など、本音を引き出す対話の促進が可能になります。
企業と従業員だけで話すと堅苦しくなりがちなテーマでも、第三者である社労士が入ることで、少し雑談的な要素を挟みながら“本質にたどり着く会話”ができるようになります。
ドラマに出てくる、あの“裏の立役者”のように
最近放送されている、フジテレビのドラマ『明日はもっと、いい日になる』をご存知でしょうか?
その中に登場する、柳葉敏郎さん演じる“職場のベテラン相談役”的ポジションに、私は社労士の姿を重ねています。
目立つ存在ではないけれど、誰よりも職場の事情を理解し、そっと人間関係を整えていく。
そんな“縁の下の力持ち”こそ、これからの社労士が担うべき立ち位置だと思っています。
AIによって、給与計算や規則作成といった業務はどんどん自動化されていきます。そんな時代だからこそ、人と人の「感情のズレ」や「対話のすれ違い」を埋める存在としての社労士の価値は、ますます高まると私は考えています。
本日は『AIの発達によって人事業務や社労士の未来はどう変わる?⑥』についてお話ししました。次回も引き続き、続編をお話しいたします。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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