【第281回】『「外国人=労働力不足の穴埋め」という考え方は通用するのか?』
- 田村陽太

- 10月17日
- 読了時間: 4分

こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は、「外国人=労働力不足の穴埋め」という考え方が、今後の日本社会・企業において本当に通用するのか?というテーマでお話ししたいと思います。
「労働力不足=外国人採用」の限界
日本では、少子高齢化が進む中、自社の求人に日本人からの応募が集まらないという理由で、外国人採用に踏み切る企業が増えています。
このように“労働力確保のための選択肢”として外国人社員を採用する考え方は、確かに一つの合理的な手段ではあります。しかし私は、「外国人=人手不足の補填」という短期的な視点だけで採用を進める事には限界があると感じています。
企業としては、もっと別の目的意識を持って外国人を採用することが、これからの日本社会では重要になってくるのではないでしょうか。
外国人採用は「国際展開」の鍵になる
まず1つ目の理由は、企業の国際展開における外国人社員の価値です。
日本の人口減少により、国内市場だけで事業を拡大することが難しくなってきています。今後、日本企業はますます「海外に販路を広げる」戦略を取らざるを得なくなるでしょう。
その際に重要なのが、すでに海外文化・言語・商習慣を理解している外国人社員の力です。
例えば、
・自国のネットワークやコネクションを活かして、新たな市場を開拓できる
・日本人社員では掴めないような海外顧客のニーズを発掘できる
・英語・中国語・ベトナム語などを駆使して、交渉や契約業務を円滑に進められる
こうした役割を担える外国人社員を“単なる労働力”としてではなく、「海外展開の戦略パートナー」として位置づけることが、企業の持続的成長に繋がります。
「安価な労働力」としての日本の魅力は薄れていく
もう1つの理由は、日本の賃金・物価水準が他国に比べて相対的に低くなってきているという現実です。
・世界的に物価や給与水準が上がる中、日本の給与は伸び悩み
・外国人にとって「日本で働く経済的メリット」が減少
・結果として、日本を選ばず、他国へ流れる人材も増加傾向
つまり、今のように「日本に来てくれる外国人を雇えばいい」と考えていては、数年後には採用すら難しくなるリスクがあるということです。
求められるのは「魅力ある企業」への進化
では、どうすれば外国人社員に「選ばれる企業」になれるのでしょうか?
ポイントは、給与以外の魅力を高める事です。
例えば、
・育児休業制度や里帰り休暇など、ライフスタイルに配慮した制度
・宗教・文化的背景を理解したフレキシブルな勤務環境
・在留資格や行政手続きの支援体制
・キャリアパスの可視化、長期的な定着支援
このように、「働きやすさ」「暮らしやすさ」「将来の安心感」を総合的に整える事が、外国人社員の定着・活躍を後押しします。
人材戦略は「未来の事業計画」でもある
「人手が足りないから外国人を雇う」だけでは、いずれ限界が来ます。
それよりも、
・外国人社員を“海外展開の要”として採用・育成する
・AIやシステム導入で業務の棚卸しを行い、少人数でも回る組織にする
・プライベートとの両立を支える制度で、“選ばれる職場”を目指す
こうした戦略的な人材戦略こそが、今後の企業存続の鍵になるのではないでしょうか。
だからこそ、「AI活用×業務の見直し×企業の魅力向上」をセットで考え、持続可能な採用戦略を築いていきましょう。
本日は『「外国人=労働力不足の穴埋め」という考え方は通用するのか?』についてお話しました。
人材戦略・労務管理・外国人雇用に関するご相談がございましたら、いつでもお気軽にご連絡ください。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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