【第284回】『小規模事業者が抱えやすい労務トラブルの傾向とは?』
- 田村陽太

- 11月7日
- 読了時間: 4分

こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『小規模事業者が抱えやすい労務トラブルの傾向とは?』というテーマでお話ししたいと思います。
ここでいう小規模事業者とは、特に従業員が10人未満の会社を指します。
こうした企業では、経営者自身が現場のプレイヤーでありながら、他の従業員を評価する管理職としての役割も担い、さらには昇給や人事評価などの人事権も握っているケースが多く見られます。
つまり、経営・マネジメント・プレイヤー業務を一手に抱えるのが小規模事業者の実態です。
従業員数が少ないため、経営者から見ると「現場の様子がすべて見えている」「トラブルなんて起こるはずがない」と思われがちですが、実は、小規模だからこそ発生しやすい労務トラブルが存在します。
① 経営者自身の知識のアップデート不足
昨今の労務分野では、法改正や労務トレンドが急速に変化しています。働き方改革やハラスメント対策、労働時間管理の見直しなどが進む中で、情報収集が追いつかず、経営者自身の自己流がトラブルの原因になるケースも少なくありません。
また、社会保険労務士に業務を委託している場合でも、経営者自身が内容を把握していないと、従業員からの質問に答えられず不信感を招くこともあります。
従業員が安心して働く為には、「これはこういうルールです」と明確に説明できる体制が重要であり、そのためにも経営者自身の知識アップデートが欠かせません。
② 従業員一人一人の業務量が過多に
経営者自身も現場でプレイヤーとして働いている中で、事業拡大を目指せば当然、従業員一人ひとりの業務量は増えていきます。しかし、それに気づかず「これくらい当然だろう」と無意識に押し付けてしまうと、残業の常態化や離職リスクの増加につながります。
今の時代、企業に求められるのは、
「限られた時間でいかに成果を出すか」=生産性の最大化 です。
経営者は、「とにかく一緒に頑張ろう」ではなく、「売上につながる戦略」と「役割分担・業務設計」の仕組みを整えることが求められています。
③ 人事労務書類の未整備
10人未満の企業では、人事業務を専門に担当するスタッフが不在で、経理や総務と兼任しているケースが多いのが実情です。そのため、入社・退職時に必要な書類の整備や管理が不十分で、採用段階で周知すべきルールの説明もされていないことがあります。
また、10人未満の事業場では就業規則の作成義務はないとはいえ、ルールが不明確なままでは、欠勤・休職・服務規程などが曖昧になり、
・注意すべき社員を是正できない
・頑張る社員を公平に評価できない
といった不公平感が社内に広がり、トラブルの火種になります。
「万が一トラブルが起きたときに、社内ルールとして説明できるか?」という視点で、あらかじめ整備しておく事が大切です。
本日は『小規模事業者が抱えやすい労務トラブルの傾向とは?』についてお話しました。
小規模企業であっても、「人が安心して働ける」環境を整える事が、採用力・定着力の強化に繋がります。制度やルールの整備に関してご不安がある場合は、お気軽にご相談ください。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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