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  • 執筆者の写真田村陽太

【第137回】外資系企業が日本支店を作る際に陥りがちな労働法


こんにちは。サンキャリア代表の田村です。



本日は「外資系企業が日本支店を作る際に陥りがちな労働法」についてお話します。



私たち社会保険労務士が扱っている労働法(労働基準法、労働安全衛生法、労災保険法・・・)は日本企業でしたら必ず適用されるものだと皆さんは思うかもしれませんが、日本に登記されている外資系企業には適用されると思いますか。



先日ニュースになったツイッター(Twitter)社の2022年11月に行われた従業員の約半数の解雇に関しても、「外資系企業だから、解雇は違法でないのか!」と日本企業と外資系企業の労働法の違いについて興味を持った方も多いのではないかと思います。



本日は、外資系企業が日本支店を設立する際に守るべき労働法についてと、日本支店で従業員を雇用する際の注意点についてお話ししていきたいと思います。今回のお話の進め方として、



➀社会保険諸法令の観点

②労働基準法、最低賃金法の観点

③労働契約法の観点



をそれぞれの観点からお話ししていき、外資系企業と日本企業で遵守すべき労働法の違いについてお話していきたいと思います。



まず➀の社会保険の観点ですが、基本的には労務を提供している国(労働している場所の国)で社会保険に加入するのが前提です。ですので、外資系企業であっても日本に登記されているのであれば、日本の各種社会保険のルールが適用されます。



ただ、日本と社会保障協定を締結している国の企業で、外資系企業本社の籍(日本支店ではなく、外資系企業本社で雇用している方)であれば、日本支店への派遣期間が5年以内であれば、外資系企業の本社の国の雇用保険、健康保険、厚生年金保険が適用される場合があります。詳しくは日本年金機構の社会保障協定のサイトをご覧ください。



日本年金機構HP 社会保障協定サイト



次に②ですが、こちらも日本支店内で明確な指揮命令の下労働が行われている場合は原則労働基準法や都道府県別で適用される最低賃金法どちらも適用されます。有給休暇の年5日取得義務、未払残業代があった場合の3年遡及、東京都の会社の場合時給1072円以上の支払い義務(2023年1月時点)等、日本企業と同様、外資系企業も日本の労働法を遵守しなければなりません。



③についても、日本支店内での指揮命令関係が存在する場合は外資系企業であっても労働契約法が適用されます。ただ、労働契約法に関しては仮に企業が法律違反を犯していたとしても明確な罰則は無く、最終的には裁判での民法に基づく損害賠償請求、慰謝料請求になるケースが多いです。例を挙げると、解雇やパワハラ、メンタルヘルス不調等の労働問題の裁判です。



ですので、明確な違法となる事項が無い事から、外資系企業によっては解雇等の労働契約法に関わる項目に関しては「日本の労働法」ではなく「外資系企業の籍がある国の労働法」を遵守すると、あらかじめ就業規則で規定している企業もあります。



その場合においても、

・雇用契約の締結、昇給等の労働条件の交渉に関して外資系企業本社で行っている事

・採用、配置転換、労務管理、給与計算等を外資系企業本社で行っている事

・給与支給元が外資系企業本社からである事



等、人事労務管理を主に対応するのが外資系企業本社である場合でなければ、仮に就業規則で「外資系企業の籍がある国の労働法を適用する」と規定していても、日本での労働トラブルによって裁判になった場合は、日本の労働法に基づいて裁判となるケースが多いと良く聞きます。詳しくは顧問の弁護士様にもご確認していただければ幸いです。



本日は「外資系企業が日本支店を作る際に陥りがちな労働法」についてお話しました。海外関係の労務、雇用関係についてのお問い合わせがありましたらいつでもご相談ください。




執筆者:田村陽太(社会保険労務士)



産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。



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