【第326回】『既存社員が納得できる中途採用の給与設計とは?』
- 田村陽太

- 7 時間前
- 読了時間: 6分

こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『既存社員が納得できる中途採用の給与設計とは?』というテーマでお話ししたいと思います。
企業が人材を採用する際、新卒採用だけでなく、中途採用を行うケースは多くあります。
既存の部署に必要な人材が足りない
新規事業に必要なスキルを持つ人を採用したい
今いる社員だけでは対応できない専門性を外部から取り入れたい
このような理由から、中途採用は会社にとって非常に重要な採用手法です。
ただ、中途採用を行う際に問題になりやすいのが、既存社員との給与バランスです。
中途入社者に対して、既存社員より高い給与を提示しなければ採用できないことがあります。
前職の給与水準を考慮したり、特定のスキルを期待したりする事で、結果的に既存社員より高い給与になるケースです。
中途社員の給与が高い事自体が、必ずしも悪いわけではありません。
問題なのは、その給与差について会社が説明できない事です。
「前職の給与が高かったから」
「採用市場でそれくらい払わないと来てもらえなかったから」
「なんとなく優秀そうだったから」
このような理由だけで給与を決めてしまうと、後から既存社員に説明できなくなります。
もし中途社員本人が給与額を周囲に話してしまった場合、既存社員から、
「なぜ自分より働いていない人の方が給料が高いのか」
「自分は長く会社に貢献してきたのに、評価されていないのではないか」
という不満が出る可能性があります。
だからこそ、中途社員の給与を既存社員より高く設定する場合には、会社として必ず準備しておくべき事が2つあります。
① 給与差を説明できる賃金規程・根拠資料を整える
まず大切なのは、給与支給の根拠を整える事です。
既存社員には賃金規程や等級制度、賞与の支給基準が適用されているにもかかわらず、中途社員だけが別ルールで高い給与になっていると、後から説明が難しくなります。
特に注意したいのは、前職給与だけを基準にして金額を決めてしまう事です。
前職が大企業で給与水準が高かったからといって、入社後の実際の能力や貢献が自社の既存社員を上回るとは限りません。
その為、中途社員に高い給与を支給するのであれば、
どのスキルを評価しているのか
どの業務を任せる為の給与なのか
どの程度の責任を負ってもらうのか
その給与差はいつまで続くのか
を事前に明確にしておく必要があります。
例えば、新規事業への参画スキルを評価して高い給与を支給するのであれば、基本給を大きく上げるのではなく、期間限定の手当として設計する方法もあります。
1年から2年のプロジェクト手当として支給すれば、プロジェクト終了後に見直す事ができます。
また、期待していたスキルや成果が十分に発揮されなかった場合にも、規程に基づいて手当を変更・廃止しやすくなります。
給与差をつけるのであれば、その差が何に対するものなのかを、会社が説明できる状態にしておく事が重要です。
② 既存社員に役割とスキルの違いを説明する
次に大切なのは、既存社員に対して、中途社員の役割やスキルの違いを説明する事です。
中途社員は社会人経験がある為、既存社員から見ると立ち位置が分かりにくい事があります。
自分より先輩なのか、後輩なのか
等級が上なのか
自分が教える立場なのか、教わる立場なのか
ここが曖昧なままだと、給与差への不満が生まれやすくなります。
会社としては、「中途だから優秀」という曖昧な説明ではなく、具体的に伝える必要があります。
例えば、
「この方には新規事業の立ち上げ経験がある為、この領域を任せます」
「一方で、既存業務や社内ルールについては皆さんの方が詳しいので、ぜひ教えてあげてください」
「給与差は、この特定領域での経験と責任に対して設定しています」
というように、何を期待しているのか、どの部分で給与差が生まれているのかを明確に説明する事が大切です。
既存社員にも、中途社員よりも自分たちの方が優れている部分があります。
社内の業務理解、顧客との関係、会社の文化、日々の運用などは、長く働いてきた既存社員だからこそ持っている価値です。
中途社員の給与が高いからといって、既存社員の価値が下がるわけではありません。
そのことを会社が言葉にして伝える事が、既存社員の納得感に繋がります。
まとめ|給与差を隠すのではなく、説明できる状態にする
中途入社者の給与が既存社員より高くなる事は、今後AI技術の発展もあり専門性が高い業務を社員に任せられていくだろう傾向を考えると、ますます増えていくと思います。
採用市場の状況や、会社が求める専門性によっては、既存社員より高い給与を提示しなければ採用できない場面もあります。
ただし、その給与差を説明できないまま放置してしまうと、既存社員の不満や不信感に繋がります。
大切なのは、
給与差の根拠を賃金規程や資料で整える事
中途社員の役割やスキルの違いを既存社員に説明する事
既存社員の価値もきちんと言葉にして伝える事
です。
給与差そのものが問題なのではありません。
問題なのは、その差が何に基づいているのかを会社が説明できない事です。
会社が給与の根拠を明確にし、既存社員にも中途社員にも納得感のある説明をしていく事が、これからの中途採用では非常に重要になると考えています。
サンキャリアとしても、採用時の給与設定だけでなく、既存社員とのバランスや説明責任まで含めた賃金制度づくりを支援していきたいと考えています。
本ニュースをご覧になり、人事労務管理に関するご相談・ご質問等がございましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
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