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  • 執筆者の写真田村陽太

【第42回】海外駐在員の働きすぎを防ぐためには?(後編)


こんにちは。サンキャリア代表の田村です。



本日は海外駐在員を抱える日本企業が課題としている「海外駐在員の働きすぎを防ぐためには?(後編)」をお話させていただきます。



海外駐在員は、海外事業を成功させるために重要なポジションですが、やりがいがある職務であるからこそ過重労働に繋がり、メンタルヘルス不調や脳・心臓疾患等の労働災害の原因となってしまう事が海外事業を行う日本企業で良く発生しております。



またそのような環境で海外駐在員を勤務させてしまう事は、日本企業が海外駐在員を安全に働かせる環境を提供していなかった事、つまり「安全配慮義務違反」として労働者又はそのご家族からの損害賠償請求のリスク、また事業活動における風評被害に繋がる可能性も抱える事になります。



そのような事態を防ぐために、日本企業の人事部として海外駐在員の過重労働を防止する上で重要な事を前回に引き続きお伝えしていきます。



②海外駐在員は「専門業務」であると人事部が認識する事



海外駐在員となる事により、日本本社で勤務していた頃に比べると業務量が倍以上になる事を前回までのブログでお伝えしておりますが、「ただ業務量が倍になる事を理由として海外駐在員の働きすぎに繋がるわけではない」と、人事部は認識することが重要です。



駐在員の業務を大きく3つに分類すると、

(1)日本企業の海外事業部門の売上を確保する「営業職」業務

(2)海外現地法人の経営全体をマネジメントする「社長・代表者」業務

(3)日本本社へ海外事業部門の代表として適切に報告・情報共有する「管理職」業務



の業務があります。



(1)の営業職としての業務においては、海外顧客のニーズを適切にくみ取り、日本本社の商品・サービスを海外顧客に適切に伝え、営業案件を獲得していくというセールスの極意を遂行していく上で、日本の顧客に営業活動を行う事と異なり、違った「言語」や「考え方」、「価値観」を認識しながら業務に取り組む必要があります。



海外顧客から引合をもらい、商談、その後クロージング・契約獲得まで、1年以上かかってしまう事も海外事業を行う上ではよくあります。また、クロージングを終えてから入金督促、納品、検収対応等、海外顧客に対して営業案件一つを獲得する事がこれだけ苦労するのかと海外駐在員として海外顧客に営業する経験を持つと実感します。



(2)の社長・代表者業務においては、経営者が企業を運営していく上で重要な経営知識全般(財務・会計・生産管理・販売管理・経済学・経営法務・情報管理・組織論・企業経営論・マーケティング等)を幅広く知っておく必要があります。



また、上記の知識を基礎として駐在国ならではの法律や生活習慣・商習慣に応じた営業活動や一緒に働いてもらう現地社員のマネジメント等日本で働いていた頃と比較して、会社を「俯瞰」して観る社長・代表者としてのトップの能力が求められます。



(3)の「管理職」業務においては、海外の現地法人を円滑に運営していく為に上記(2)の能力と合わせて、海外事業を成功させる上での現状や将来あるべき目標、問題点・課題、日本本社への要望の伝達等、日本本社に海外部門の代表者として適切に報告・情報共有する必要があります。



また日本本社と海外事業の情報共有をした上で、海外現地法人がどう進んでいくべきかの意思決定や現地法人を一緒に運営していく現地社員に対して、進むべき設計図や構想をしっかりと共有し、与えるべき情報を提供するというグループリーダーとしての役割・能力も求められます。



これら代表的な3つの業務をこなす事は、経営に関する幅広く且つ専門的な知識、また部下や上司とうまくコミュニケーションを行って仕事を進める上での円滑なマネジメント能力、また、異国での異文化や異なる言語という環境下でも海外事業活動に邁進して取り組む姿勢が必要とされます。いわばスペシャリストとしての「専門業務」を海外駐在員には求めれます。



第33回のニュースにおいて、海外駐在員たるべき素質に関してご説明しましたが、海外駐在員はそのような素質をもつ必要があるだけでなく、上記(1)~(3)の能力も求められ、それが海外駐在員のやりがいにも繋がります。



しかし、高い能力を持つ従業員が海外駐在員として選定されるため、自身の自己無力感を否定するために、「業務を抱え込んでしまう」海外駐在員も多く、それが海外駐在員の働きすぎに影響してしまいます。



よって人事部は海外駐在員の業務内容や大変さに関して理解し、週ごと月ごとに海外駐在員の労働時間や業務量に関して、日本本社の海外事業担当や管理職と情報共有を行い、人事部、海外事業部、海外駐在員のオンラインでの三者面談を実施する事が非常に重要です。



またその際に、ただ単に海外駐在員の労働時間を削減する為に業務量を減らすのではなく、「海外駐在員にしか出来ない業務は何か?」「本社の海外事業部や人事部で協力できる雑務は無いか?」等海外駐在員のやりがいを奪わないような業務分担が達成できるよう、内容にも配慮した面談の機会を設ける事が人事部にとって非常に重要です。



以上、「海外駐在員の働きすぎを防ぐためには?(後編)」をお話させていただきました。海外駐在員は会社の出世の為のポジションではなく、会社の事業存続を左右する、余人を以ては代えがたい、駐在員自身の特性がダイレクトに影響する企業経営にとって非常に重要なポジションです。



海外駐在員の労務管理の重要性に関して、より多くの日本企業に意識して頂き、海外駐在員が生き生きと働けるような職場づくりを弊所では全力でサポートしております。今後とも弊所のニュースをどうぞよろしくお願いいたします。




執筆者:田村陽太(社会保険労務士)



産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。



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