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  • 執筆者の写真田村陽太

【第54回】貿易実務書類の準備方法(輸出編②)


こんにちは。サンキャリア代表の田村です。



本日のテーマは、前回の続きで、海外企業と商談を行うステップで相手企業との契約締結時に必要とされる「貿易実務書類の準備方法(輸出編②」についてお話していきたいと思います。



前回のお話で、信用調査レポートやテストレポート(報告書)の重要性に関してお話させて頂きましたが、海外企業とやり取りをする上で時差がある事がスピーディーにやり取りを行う事を難しくさせる問題点や、相手企業と距離が離れている事が、企業がビジネスを行う上で本当に信用に足りる企業なのか判断させにくくしているという問題点等があります。



そのような問題点を克服するために、商談を確約させるまでに信用調査レポートやテストレポートを作成し、そのような自社が起こした行動に対して相手企業がどのように対応してくれるかを見極める事は非常に重要です。



今回は、前回の続きで、輸出側の企業が貿易実務を行う上で重要な書類についてお話していきたいと思います。



➀秘密保持契約書(NDA)

秘密保持契約書とは、相手企業とビジネスを行う上で自社の営業上、技術上、サービス上の秘密等を開示する上での遵守事項や守秘義務等、契約上の目的外に使用されないように相互に合意しておくものです。



自身が輸入する側であれば取り交わしはしなくても良いかもしれませんが、製品やサービスを輸出する側であれば必ずNDAを相手企業と取り交わしするべきだと思います。



その理由としては、海外の顧客に一度商品・サービスを提供してしまうと、自社以外の第三者に重要な情報が漏洩する可能性があるからです。



日本の顧客であれば技術情報が漏洩した際にはメディアに取り上げられたり、知人の企業からの情報等ですぐに発覚したりしてしまいますが、海外の顧客であれば日本から情報を取得するのは難しく、知らず知らずのうちに自社のコピー商品が海外で作られてしまったり、類似会社を設立されてしまったり等のトラブルも起きてしまう事があります。



秘密情報とは何か、秘密情報を開示したとみなされる会社の行為は何か、情報を開示できる対象者は誰か、コピーが出来るのか等、相手企業に商品・サービスを提供する際に自社の情報漏洩する上でトラブルとなりそうな事項を契約書に盛り込んでいくという流れとなります。



経済産業省のHPに秘密保持誓約書の日本語版のひな形があるので、英語に翻訳して各会社でカスタマイズして作成する事がスムーズで良いかと思います。

https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/trade-secret.html



また輸出側の会社が秘密保持誓約書を作成する上で重要な事は、「いかに秘密保持誓約書の内容を曖昧にする」という事です。何か情報漏洩のトラブルがあった際にも、「そのようなトラブルも契約書の対象としている事例に含まれているため、相手企業に対してクレームしやすい」というような秘密保持契約書の作成が重要です。



②見積書

信用調査やサンプル・試作での品質の認識の合意、重要情報を相手企業に提供する上での秘密保持契約書の取り交わし等を終えた後は、売買契約の締結に移っていきます。



相手企業が必要とする数量や商品・サービスの詳細な内容、納期等のヒアリングを進めた後、契約内容の仮決定である「見積書」の作成を行います。見積書に盛り込む事項で特に重要な項目は以下の3つです。


・貿易取引条件

・支払条件

・納期



貿易取引条件とは、相手企業に商品を引き渡しする際のリスクがいつ移転するか、船舶運賃や保険運賃をどこまで企業が負担するかを明確にする事項です。海外取引で利用する取引条件としては、FOB(FCA)やCIF(CIP)が多いですが、海外輸出を始めたばかりの企業はEx-Works(自社工場渡し)として、相手企業に船舶や税関手続き等のハンドリングを任せるのが行いやすいです。



ただEx-Works(自社工場渡し)ですと、相手企業の手続きの段取り次第では海外企業に納品する時期が遅くなったり、港での倉庫保管料が多くかかってしまったり等のデメリットもありますので、事前に相手企業の業務の円滑さや風土等を見極めて見積書に盛り込むと良いです。



支払条件とは、輸入する側が輸出する側にいつ商品の支払いを行うかの条件の事です。基本的に輸出する側は自国の港から製品を輸出する前に全額費用を回収(100%T/T送金)するのが理想的です。



納期を設定する上では、通常相手企業からの購入申し込み(PO sheetの受領)後〇か月までに製作と設定する事が多いです。場合によっては売買金額の何%を輸入側から前受けで受領してから製作すると追記するパターンもありますので、相手企業の信用度も見極めながら決定する事が重要です。




今回は、「貿易実務書類の準備方法(輸出編②)」に関してお話させて頂きました。次回は続編で貿易実務書類の準備方法(輸出編➂)についてお話していきたいと思います。





執筆者:田村陽太(社会保険労務士)



産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。ラジオDJ、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター等、音声メディアや放送業界でも活動。また、番組プロデューサー、ポッドキャストデザイナーとしてPRブランディング事業も手掛ける。



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