【第275回】『AIの発達によって人事労務や社労士の未来はどう変わる?⑤』
- 田村陽太
- 3 日前
- 読了時間: 4分

こんにちは。サンキャリア代表の田村です。
本日は『AIの発達によって人事労務や社労士の未来はどう変わる?⑤』というテーマでお話ししたいと思います。
前回は、AIの進化により人事業務が効率化されていく中で、今後社会保険労務士が担うべき役割として、以下の3点をお伝えしました。
【社会保険労務士が今後担うべき主な役割】
①会社の人事「部」を社内で育成する
②従業員の感情面を細やかにアドバイス・フォローする
③相談対応時の企業・従業員間の“ファシリテーター”として機能する
今回は、このうちの②「従業員の感情面を細やかにアドバイス・フォローする」について、詳しくお話ししていきます。
感情に寄り添う力が求められる人事部
前回は、人事部の育成が重要であることをお伝えしましたが、人事部には単なる労務手続きだけでなく、従業員からの相談対応能力が求められる場面が増えています。
特に難しいのが、「明確な正解がない」相談への対応です。
例えば、経営理念や社風との整合性、会社の方針との関係性など、単なる法律や会社の制度では答えきれない問題も多く含まれています。
“正解がない相談”に必要なのは「感情の理解」
従業員からの相談においては、たとえ制度上の回答が明確に存在していたとしても、
その回答が本人の気持ちに沿っていなければ、モチベーションを下げてしまう可能性があります。
時には、その場で回答できない、あるいは会社として対応できないこともありますが、
そのようなときこそ「どのような感情でその相談に至ったか」を汲み取る力が大切になります。
本音は“別のところ”にあることも
たとえば、表面上は「勤務時間の相談」でも、実は「家庭との両立に対する不安」や「職場での孤立感」が根本の原因であることもあります。
こうしたケースでは、まずしっかりと話を聞き、背景や感情を丁寧に拾うことが最も重要です。相手の話を受け止め、「寄り添ってくれている」と感じてもらうことで、具体的な解決策がなくとも、不安や不満が和らぐことがあります。
社労士事務所だからこそできるサポート
私たち社労士事務所は、業種・従業員規模・企業文化など多種多様な会社を支援してきた経験から、「こういう背景の従業員であれば、こうした価値観や感情を持ちやすい」という知見を持っています。
また、過去の対応事例から「こうすればうまくいく」「これは避けるべきだった」という
実践的な“処方箋”を持っていることも、社労士の強みです。
このような知見を活かして、クライアント企業の人事部へ「こういう背景があるかもしれませんよ」といった“感情の翻訳者”としてのサポートが可能になります。
人事部の相談対応を“楽にする”ために
相談を受ける人事担当者も、答えが見えない相談に対しては精神的負担を感じるものです。
そんなとき、私たち社労士が「こういう道筋がありますよ」と一つでも仮説を示すことで、
人事担当者が気持ちに余裕を持ち、安心して相談対応に臨むことができるようになります。
今後、AIの発展で手続きや文書作成などの業務はどんどん自動化されていきます。
だからこそ、“人にしかできない業務”の代表格である「感情の理解と支援」が、社労士の重要な役割になっていくと個人的には思います。
本日は『AIの発達によって人事労務や社労士の未来はどう変わる?⑤』についてお話ししました。次回も続編をお話ししていきます。

執筆者:田村陽太(社会保険労務士)
産業機械メーカーの海外営業、社労士法人での勤務経験後、海外駐在員や外国人社員等のグローバルに働く社員が輝ける職場づくりを人事面からサポートしたいという想いで、社労士事務所を開業。海外駐在員や外国人社員の労務管理、外国人留学生・技能実習生の就労支援等、企業の国際労務・海外進出対応に強い。番組プロデュース、ポッドキャストデザイン等のPRブランディング事業も手掛ける。株式会社サンキャリア代表。
社会保険労務士事務所Sun&Careerホームページはこちらです。
インターネットラジオ・ポッドキャスト番組「企業と従業員の働き方を考える 『社労士ラジオ サニーデーフライデー』」のリンクはこちらです。
社労士労務顧問、ナレーター、インタビュアー、番組MC・ナビゲーター、ポッドキャスト番組制作等のご依頼はお問い合わせフォームまでご連絡ください。
コメント